出版社内容情報
近代において、人と人とのつながりを回復する可能性は何か。イリイチ最晩年の思想の根底を明かす。
内容説明
人びとに「未来」などない。あるのは「希望」だけだ。「最善の堕落は最悪であるCorruptio optimi quae est pessima.」―教育・医療・交通など「善」から発したものが制度化し、自律を欠いた依存へと転化する歴史を通じて、キリスト教‐西欧‐近代の最深部に批判を向けつつ、尚そこに、「今・ここ」の生を回復する唯一の可能性を探る。イリイチの思想の根底が示された最晩年の美しい結晶。
目次
1 最善の堕落は最悪(福音;神秘;偶然性1―神の掌中にある世界;偶然性2―テクノロジーの起源;罪の犯罪化;怖れ;福音とまなざし;健康;均衡;学校;友情;いかに死ぬかを知る;システムの時代;結び)
2 反復(終末の始まり;良心;至高の栄光;道具からシステムへ;身体化と脱身体化;コンスピラツィオ;分水嶺を越えて;無償性)
著者等紹介
イリイチ,イバン[イリイチ,イバン][Illich,Ivan]
1926年9月4日、オーストリアのウィーンに生まれる。父親はカトリックを信仰するクロアチア人、母親はポルトガル系ユダヤ人。1941年、ナチの人種法の施行によって放校、フィレンツェに渡り、フィレンツェ大学で生物組織学と結晶学を研究。43~46年、司祭となるためローマのヴァチカン・グレゴリオ大学で神学と哲学を学ぶ(51年神学学士号取得)。その後オーストリアに戻りザルツブルグ大学でトインビーについて博士論文を執筆、博士号取得。52~56年、アメリカ・マンハッタンの受肉教会司教区で働く。56年、プエルトリコ・カトリック大学副学長に就任。60年、現地の司教と対立し辞職。プエルトリコを離れる。61年、メキシコ・クエルナヴァカにて「CIDOC」設立に参加。69年、ローマ・カトリック教会との軋轢により司祭の資格を放棄する。以後、『脱学校の社会』を皮切りとして、学校、エネルギー、医療、労働、性、言語、環境などを切り口に、近代文明の根源的な問題を提起し続けた。2002年12月2日、ドイツのブレーメンにて死去
ケイリー,デイヴィッド[ケイリー,デイヴィッド][Cayley,David]
CBC(カナダ国営放送)ラジオ・プロデューサー。編書『生きる希望―イバン・イリイチの遺言』のもととなった番組『アイディアズ』を手がける
臼井隆一郎[ウスイリュウイチロウ]
1946年静岡県生。東京教育大学大学院文学研究科修士課程修了。新潟大学教養部助教授を経て、東京大学大学院総合文化研究科教授。専門、文化学、ヨーロッパ文化論、言語情報文化論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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