内容説明
家族構造からみた人類学的分析による、ひらかれた同化主義の提唱。国ごとに異なる移民政策、国民ごとに異なる移民に対する根深い感情の深層を抉る。
目次
普遍主義と差異主義―心性構造における対称性と無対称性
アメリカにおける差異主義と民主主義―1630年から1840年
合衆国における白人諸民族の同化
合衆国における黒人の隔離
多文化主義の幻想
イングランド―階級の差異主義対人種の差異主義
直系家族型システム―差異の知覚と単一性の夢
ドイツにおける同化と隔離
フランス―普遍的人間の国土
ユダヤ人の解放
マグレブ的な人類学的システムの分解
フランスと有色人種
誤った自覚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
in medio tutissimus ibis.
2
移民の運命は同化である。とりわけフランスにおいては、支配的な地位を与えられた普遍主義の家族構造を発揮し、その不調から過剰に働く差異主義の変形である多文化主義を抑え、あらゆる個人を普遍的フランス人として受け入れるべきである、とトッドは説く。しかしながら本書の主役は普遍主義ではなく日本も含まれる差異主義であり、その移民の様態を研究される米英独仏の四国のヴァリエーション豊かな差異主義的家族構造を一瞥すればそれは明らかである。イスラム、地中海、ロシアや中国における普遍主義は全くフランスの添え物として扱われる。2020/01/20
Z
2
ベースには、この人の家族構造によって、人間の平等や、自由に関する価値観がある程度決定され、それが各国のとる政治の制度に反映されるという思想がある。アメリカの多文化主義に対し、フランス型の政策を称える。著者のとる視点はリアリスティックで、イスラム諸国からの移民はいとこ婚を認めないように、共同体内部で閉じようとする。多文化主義は差異を差異として尊重するが経済的弱者を再生産する危険があり、それよりある程度国のルールにあわさせ、それを守れば、出世可能にするようなフランス型の政策のほうを讚美している。日本も移民のう2015/02/04
lakers_mania
2
家族制度は隣国だから似ているのではなく、思いがけない国同士が似ていたりするので面白い。
人生ゴルディアス
1
内容はタイトル通り。家族構造、初婚平均年齢の男女差、就学率等々のデータを駆使し、移民を飲み込む側と飲み込まれる側の反応を鮮やかに描き出す。実験心理学などの後知恵から、トッドが指摘しているいくつかのことはおそらく正しいと言える(アメリカ白人が黒人に対して無意識に嫌悪感を抱く等)。重要なのは、どうやら人間の脳機能そのものが分類と類型化を勝手にしたがり、社会における自分の立ち居地を作りだし、しかもそのことに囚われることだろう。『子育ての大誤解』では、子供が育つ過程を通じて、同じ問題をより具体的に扱っている2013/03/11
たーぺー
0
5章まで。また読み返す。2014/09/29