内容説明
1950年代後半、若干23歳の脚本家の存在が日本映画界に衝撃を与えた。日本の映画人口が11億人のピークを迎えていた頃、突如現れた若き脚本家・白坂依志夫。少年のような風貌の脚本家が生み出す白熱する台詞に人々は圧倒され、そして困惑した―。新しい映画を求めた脚本界の寵児が、映画、父、夜遊び、結婚を当時の言葉で軽快に綴ったエッセイ集。
目次
序 美男子では損である(寺山修司)
1 ある青春
2 父・八住利雄のこと―映画と野球とナニワブシ
3 日本映画に未来はあるか―夜中に煙草をくゆらせて
4 増村保造監督との仕事―マスさんのこと
5 “女”について
6 夜の喧噪を跳ねて
7 人間万華鏡
巻末対談 白坂依志夫×篠田正浩(映画監督)
白坂依志夫のこと(恩地日出夫(映画監督))
著者等紹介
白坂依志夫[シラサカヨシオ]
1932年、東京生まれ。中学時代からシナリオ・ライターである父・八住利雄の仕事を手伝い始める。成城学園高校に在学中より演劇活動に熱中。早稲田大学文学部を中退後、二十三歳という若さで大映多摩川撮影所と脚本家として契約。それまでの日本映画のスタイルを一新するモダンで斬新な作風で、一躍、脚本界の寵児となる。その他にも、各映画会社にわたって、幅広いジャンルにおける秀作が数多くある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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くさてる
7
1950~60年代に活躍した脚本家のエッセイや対談、回顧録など。当時の有名人(三島由紀夫や寺山修司など)との関わりのほか、様々な人々とのもっとあけすけな交友関係までを語る中身は、この時期の日本映画に興味がある人ならとても楽しめると思う。また、そうでもない私にも、この素晴らしく頭が良く魅力的だけど、確実に善人ではない男性の語りが刺激的で面白かったです。2013/12/03
mittsko
6
なんともこだわりのつよい映画本! 凝った装丁の分厚い新書版で出すあたり、ニヤリとさせられる。手に取って楽しい。かつて若々しく荒々しい才能で一時代をきずいた映画脚本家・白坂依志夫(1932-2015)。増村保造とのコンビが一番有名かな。主に50年代から60年代に発表された氏の文章・エッセイを集成し(その後の文章もいくつか)、最後に00年代以降に書かれた「人間万華鏡」の部、映画監督・篠田正浩との対談などを付す。注として挿しこまれた人物解説もえぐみがあってよい(とくに白坂筆のもの)。2013年刊。2019/02/12
garth
5
ついゴシッピーな話に注目しちゃうんだけど、この本は本当にものすごく面白く、白坂依志夫のものすごい頭の良さがよくわかる。「すぐれた映画作家増村保造氏が、『美貌に罪あり』などという作品を撮ることを、若い批評家は、事前に阻止しなければんらない……若い批評家は、彼が、本当にいいたいことを吐きだすことを、エッセイではなく、映画の上で表現させるために、努力をおしんではならない」2013/07/03
ホッタタカシ
4
父親が有名脚本家だったため労せずに脚本家となり、「若者のナマなセリフと風俗描写」を得意とする売れっ子ライターへと成長、さまざまな文化人・芸能人と遊び歩いては、猟色と睡眠薬に耽溺、50歳になるやあっさり燃えつき引退、という作者が書き飛ばしたエッセイ集と回顧録。交流のあった三島由紀夫、大江健三郎、安部公房の面々も登場する。一方、「男色脚本家。エグい話を書かせたらこの人の右に出る者なし」などの、著者自身による人名注釈がユニークというかヒドい。頽廃的で下衆な視点によるゴシップが多く、古き良き芸能界を覗き見できる。2013/05/17
RHINO
3
読みながらずっと川島雄三のエッセイのことを考えていた。知性豊かなニヒリストが書いた昭和30年代の映画界と文壇、そしてゴシップ。面白くないわけがない。大抵は読み飛ばしてしまう脚注も必読2015/12/18