内容説明
三池争議の吹き荒れた昭和三〇年代の大牟田。炭鉱社宅での日々を遊び盛りの少年の眼を通して生き生きと描く。
目次
宮原社宅
三十一棟のタカちゃん
懲りない少年
遊んで食べて手伝って
世界の揺らぎ
「外」の世界で
やがて来る日に
ふたたびの大牟田
著者等紹介
農中茂徳[ノウナカシゲノリ]
1946年生まれ。大牟田南高等学校卒業。東京学芸大学を卒業したのちに福岡県内の聾学校および養護学校に勤務。現在は福岡県立大学非常勤講師(人権教育)。福岡県人権・同和教育研究協議会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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どんぐり
66
福岡県大牟田市にあった三井三池炭鉱は、国のエネルギー政策によって1997年に閉山している。宮原社宅は、三池炭鉱の炭鉱夫のための住宅で、いわゆる“炭住”といわれるものである。著者は、敗戦の翌年にその宮原社宅で生まれ、高校生の頃までそこで育った。ここには、1950年代後半に炭住というコミュニティで暮らす少年たちの姿が生き生きと描かれている。その風景は土門拳の写真集や、読み手の自分自身が炭鉱町で育ったので、少なからず理解できる。炭鉱町には、鉱員たちが暮らす炭住とその周辺に共同風呂や広場等があり、別の区画には事務2016/11/28
きくまる
1
昔、上野英信さんの本を夢中で読んでいた時期があって、「炭鉱」というタイトルに関連を感じて購入、そのまま放置していた本。前半は、炭鉱の街の中で過ごした子供時代の思い出、いかにも昭和の子供時代の話だったが、後半、上野英信さんが残した、三池炭鉱の子供は幸せだという言葉へのこだわりから、日常にあった差別、労働者と資本家、労働闘争を通しての分断等々、決して単純に幸せな子供時代であったわけではなかったことが語られている。私より15歳ほど先輩、昔はよかったなんて単純には言えないけど、やはり何か懐かしさをおぼえた。2025/05/08