内容説明
「光市母子殺害事件」裁判は、裁判員裁判の実施前の大試練である。佐木隆三・毛利甚八・綿井健陽各氏らが、事件・裁判を読み解く。
目次
座談会/光市事件裁判の論点を考える
被告人は心の底から湧いてくる言葉を明かすべきだ―光市母子殺害事件・差戻し控訴審を傍聴して
被害者・遺族も、被告人も救われる可能性―光市を歩く
「公益」色あせる検察―光市母子殺害事件と被害者の存在感の高まり
世の中に伝えるべき対象は「被害者・遺族」だけなのか―「光市裁判報道」はもう一度「差戻し」てやり直す必要がある
解説・光市事件裁判と弁護士懲戒問題―刑事弁護活動とはなにか
Q&A光市事件・裁判
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ず〜みん
4
光市事件の元少年の差し戻し審の弁護士などの座談会やコラムなど加害者視点からの著書。まず、座談会について。人の命は1つしかないが、それが2人だから3人だからと命の数を並べて死刑だ無期だと論じる方が問題だ。命の重さは同じでも、背景が異なるからこそ審理に審理を重ねて裁判で量刑を決定するのではないか。また、遺族男性とマスコミによる世論形成で元少年は死刑になったというが、マスコミを使って印象操作しているのは加害者の弁護側もなのだからお互い様。ドラえもんなどの幼稚性を全面に出そうとしていたはず。私は共感できない本だ。2023/06/21
那由田 忠
3
マスコミ報道から分からない、新弁護士団が主張したどのような事実誤認があったかの全体像を知ることができる。あわせて08年控訴審判決の全文を読むと、弁護士側の主張が非常に詳しく否定されていてそれなりの説得力がある。しかし、友達がいなくなって暇つぶしをしていた、18歳の若者が強姦を意図して近くの団地を戸別訪問をしたという、検察の構図自体に大きな疑問を感じた。勤めている会社名を知らせながら強姦を意図するバカはいないだろう。拘置所にいた「友達」への手紙を検察が証拠提出するなど、悪意ある訴訟進行も問題である。2013/08/19
dragon~arrow
2
加害者を擁護する気持は毛頭ないが、教育をまともに受けていない加害者少年が検察の息のかかった少年と文通を始め、その内容の非道さが被害者サイドからしかマスコミは報道しなかったなどの今まで知らされてなかった事が多く書かれていた。改めてこの事件とその後の動きの重さを感じた。2012/05/24
まいこ
2
光市の事件は事件の大きさに比して報道量が非常に多いが、その殆どが遺族視点でのものであり、遺族のバイアスのかかった事件・裁判しか知ることができない。遺族の感想や遺族の意見に無関係にこの裁判を知ろうとするとかなり能動的に情報を集める必要があり、そういう構造事態が既に歪んでいると感じる。綿井健陽氏の章を読んで深く納得した。2010/01/06
Ayumi Katayama
0
共感するところの多い一冊だった。この事件に関して既に三冊を読んできたが、それまで抱いてきた疑問がまさに問いかけられており、うなずきながら読んでいた。特に、毛利甚八氏の『被害者・遺族も 被告人も救われる可能性』には感じるところが多い。被害者も遺族も被告人も救われる……。それは難しいだろう。だが、もう少しでもそれに近づくことはできないだろうか。近づく努力が必要ではないだろうか。そうすることによって社会がより成熟できるのではないだろうか。2016/03/16