出版社内容情報
なぜこの国では、過労死が絶えないのか。古今東西の知識人たちが唱える「怠ける権利」に学び、日本社会を脱力させる方向を目指す。
内容説明
ラファルグ、ラッセル、ケインズ、ヴェブレン、そして水木しげる。「怠ける権利」の思想史をひもときながら、過労死を生み出す「自発的隷従」を克服する“処方箋”を提示する!
目次
第1章 「怠ける権利」とは何か
第2章 わが孫たちの経済的可能性?―ケインズの予言はなぜ外れたのか
第3章 勤勉―死に至る病
第4章 「奴隷の国家」がやってきた
第5章 「社畜」の誕生―「包摂型社会」のゆらぎのなかで
第6章 「棄民の国家」の方へ―「失われた一〇年」に起こったこと
第7章 「純ちゃん」と「晋ちゃん」―「棄民の国家」の完成
第8章 子どもと若者に「怠ける権利」を!
第9章 ベーシックインカムと「怠ける権利」
第10章 「なまけ者になりなさい」
著者等紹介
小谷敏[コタニサトシ]
1956年鳥取県生まれ。大妻女子大学人間関係学部教授。専門は現代文化論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
FK
5
ポール・ラファルグの『怠ける権利』はすでに読んでいたので、この書名に驚かされた。もちろん書名に著作権はないとしても。敬意を表してか「!」が付け加えられている。副題は刺激的だ。 「「貧者を処罰する」国」(P.144)とは何とも過激な表現だが、生活保護とかニートとかに対する一般庶民の目は冷たい。若者たちに対しては「大人たちは「勉強せよ、労働せよ、消費せよ」と言い続けてきた」(P.160)と指摘する。しんどい内容だが一読の要あり。 2018/10/07
衛府蘭宮
4
現代の青年が読むべき本は『坂の上の雲』でもなければ『巨人の星』でもなく、ましてや『官僚たちの夏』でもなない。この『怠ける権利!』である。戦後日本の歪な来し方を科学的に理解し、かつラファルグやウェブレンの社会思想の可能性を存分に噛み締めて萬世に安寧を開かんと欲せよ!2018/08/16
K1
3
右肩上がりの時代は終わったー坂道を上りつづけるのではなく、坂道を下りていくことが、今後の課題となっていく。さてと、どうやって下りましょうかねぇ。なまけ者になるために、好きなだけ寝るとしよう。2018/10/19
WaterDragon
3
『怠ける権利!』なんて素敵なタイトルでしょう。この〝怠ける権利〟という言葉は、19世紀フランスの社会主義者であるポール・ラファルグに由来するそうです。本書は「死に至るまでの労働を人々に強いる、日本の社会構造と人々価値観の歪みは何故生まれたのか」(1㌻)を、ラファルグ、ケインズ、ラッセル、ヴェブレン、水木しげるをひもときながら解明することを目的にします。専門書とは思えないほど読みやすい本です。特筆すべきは、〝AI〟と〝BI〟について一章設けていることです。〝AI〟は3時間労働を可能にするか。2018/07/22
nekomeys59
1
生活費を稼ぐために働くはずが、いつしか「自己実現」という言葉で働く事が人生のように言われる。いつから「怠ける=悪」となったのか。それどころか、自発的に過労死する様な働き方をする。本書それを「自発的隷属」として、そこから抜け出す方法を論じている。真面目に「怠ける」事は働く事を真面目に考えていると思う。生活保護自給者を非難するが、富裕層の各種の不労取得、社会的地位の世襲への批判が少ないと言う指摘には納得。2019/12/31