内容説明
とてつもない「負の歴史」を背負ったドイツは、いかにして被害者や近隣諸国の信頼を取り戻そうとしてきたのか―。在独17年のジャーナリストが、政治・教育・司法・民間における取り組みの現場を訪ね、ドイツ人の「過去との対決」について報告する。
目次
1 政治の場で(ベルリン・ホロコースト犠牲者追悼碑;賠償の出発点・ルクセンブルク合意 ほか)
2 教育の場で(ナチス時代を重視する歴史教科書;歴史の授業は「暗記」ではなく「討論」が中心 ほか)
3 司法の場で(アウシュビッツ裁判がドイツ人に与えた衝撃;10万人以上の容疑者を捜査したナチス犯罪追及センター ほか)
4 民間の取り組み(ドイツの企業はいくら賠償したのか;過去の暗部を公表したフォルクスワーゲン社 ほか)
5 過去との対決・今後の課題(極右勢力の伸張;極右による暴力事件の増加 ほか)
著者等紹介
熊谷徹[クマガイトオル]
1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題を中心に取材、執筆を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ののまる
11
被害の歴史をもって「平和」を主張しがちな日本ですが、その前に加害の歴史に自分たちがちゃんと向き合うドイツのような姿勢がないから、近隣諸国から基本的に信頼がない。2021/08/12
いのふみ
6
ドイツの徹底的なまでの過去との向き合い方はまさに「対決」だ。未来にわたって反省することを引き受けたその態度は真摯で、厳格だ。しかし、単に反省をするだけではなく、現在も残る東西の経済格差、再び台頭してきている極右NPD、敗戦後のドイツ人の追放問題、流入が激しい難民問題などといった複雑さを抱えていることが状況を厄介にしている。2016/01/25
Takao
5
2007年4月1日発行(2018年3月1日、第5刷)。12年前の出版。第2次大戦後における周辺諸国に対する謝罪と償い。日本とドイツは対照的といわれるが、実際どうだったのだろう。著者は元NHKのフリージャーナリストで1990年からドイツ・ミュンヘン在住。現地で暮らしながら関係者を取材している。ドイツも決して戦後間もない頃から補償を進めてきたわけではなく、長い歴史があったこと、統一後の東ドイツなど最近ではネオナチの台頭もあることなど…。ただ、戦後日本に関しては未だに「戦後」が終わっていない、と改めて思った。2019/08/15
Kohei Fukada
4
知るにつれ、ドイツが負の歴史と真正面から向き合ってきたその姿勢に並々ならぬものを感じる。特に教育と被害者への姿勢については大きく違う。中でも第二次大戦あたりの教育をまるまる1年半かけて徹底的にやるというのには本当に驚いた。近隣諸国との共同での教科書作成も根気強く行われていて日本も見習っていかなければならないと思った。これから戦争経験者がいなくなる時代に入るにあたって歴史にどう向き合っていくかの方向性を定めていくのは日本の急務だと思う。2011/08/18
讃壽鐵朗
2
ナチスとの対応についてのみの本2020/01/07