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内容説明
そしてふたたび夏、麗しい夏の一日。ひと組の男女が織りなす言葉のダンス。追憶、諍い、嘆息、夏の風の中の樹々のざわめき―現代欧州文学を代表する知性による、静謐な二人芝居。2014年国際イプセン賞受賞作家が描きだす言葉にされぬものたちの声。
著者等紹介
ハントケ,ペーター[ハントケ,ペーター] [Handke,Peter]
1942年、オーストリア・ケルンテン州生まれ。オーストリアを代表する作家・劇作家。大学在学中に発表した小説『雀蜂』と戯曲『観客罵倒』で衝撃的な登場をとげる
阿部卓也[アベタクヤ]
関西学院大学准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
57
男女二人がほとんど動くことなく会話しているだけの短い戯曲。男が女に問いかけ、女がそれに答える。男の問いかけはおもに女の過去のこと。それは追憶に耽るような審問のような会話。ときおり、二人の間を言葉とともに林檎が一つ行き交う。この戯曲の題はシラーの劇詩『ドン・カルロス』の冒頭で王の懺悔聴聞僧が王子カルロスに語る台詞「アランフェスの楽しい月日も、只今かぎりに相成りました。…」から取られており、劇中男が会話の途中で、唐突に「アランフェスに行ったことがあるんだ」と言う。王室の夏の離宮だったアランフェスは⇒2022/12/26
おさむ
33
今年のノーベル文学賞をとったオーストリアを代表する劇作家、ペーター・ハントケを初めて読んでみた。男女2人の対話で構成される戯曲。性について互いに語り合うが、結局は分かり合えない。噛み合わない会話がときに面白く、まるで詩のような表現も多い。あとがきでハントケ氏が映画「ベルリン〰天使の詩」の脚本家と紹介されており、思わず納得。あのブルーノ・ガンツらの黒コートの天使たちのボソボソした対話を思い出しました笑。2019/12/22
棕櫚木庵
19
悪い予感的中・・・詩集を思わせる清楚な装幀の薄い本,ひょっとして私の最も苦手とする類かも,と思って読み始めたら,やっぱりヒジテツ喰いました.女が何を言っているのかさっぱり分からない.最初の部分は神秘主義的体験の話かなと思いましたが,そもそもこれが的外れ? 最後の方,話が男とかみ合っていないけど,それはどういうことなのか??? 読み終えた今,明るい陽光に溢れるアランフエスの夏の日だけが印象に残っています.ああ,さらば,あまりにもわけのわからぬ夏の日の輝きよ.今,外は秋晴れ,いい天気(← ヤケ^^;)2020/10/17
新田新一
14
2019年にノーベル文学書を受賞したペーター・ハントケによる戯曲。一組の男女による謎めいた会話が延々と続きます。非常に難解で、なかなか意味が掴めませんでした。普通の人の会話というより、詩のような趣があります。ただ林檎が出てくるのが面白くて、これはハントケが脚本を書いた映画『ベルリン天使の詩』と似ています。私はこの映画が好きで、10回程観ました。黙っているより話をすれば、お互いに通じ合うものが出てきて、コミュニケーションは少しずつ成立します。そのメタファーとして林檎が使われたのかもしれません。2023/11/24
空の落下地点。
4
観念を読んで観念しか浮かばなくても良いんだよって言われた気がした。山の前に浮かぶティアラを形成した七つの星、子供たちの組体操する花束は殆どが善の華だが僅かには悪の華もある、魔女の輪は談笑するように無数の輪を描き、光は洋服になる。果樹園の林檎、早熟で闇を抱えた林檎、二人がキャッチボールする林檎。ブランコはあれなんだろうなとか、ホウセンカはあれなんだろうなとか。性の他、障害の匂いもした。「もう一つの性」とか、「小さな異端審問官」=子供が大人になり切れない空想好きを指さすとか。繋がろうとする弱き野菜の幼気さよ。2019/12/05