内容説明
本書は、ウィリアム・フォークナーとユードラ・ウェルティの各々の文学空間における「間テクスト性」の秘められた力に光を当てる試みである。この二人の作家が創造したのは、巨大な「間テクスト性」の磁力を発するテクストに他ならない。その磁力は、作家の個人的な小説世界の内部において生じているだけではなく、外部の世界のテクストに対しても強く働いている。両作家の一テクストが様々な別個のテクストと同一の磁場に置かれるとき、そこから如何なるエネルギーが放出され、如何なる読み・解釈の可能性が立ち現れてくるのか。深南部の歴史と文化を背景に、その可能性を探る。
目次
第1部 ヨクナパトーファの「小宇宙」―フォークナーのテクスト間の反響・共振(『土埃にまみれた旗』と『征服されざる者たち』―神話とアポクリファ サートリス家の男たちとサザン・マスキュリニティティ;「ウォッシュ」と『アブサロム、アブサロム!』―プア・ホワイトの階級闘争の表象 暴力の正当化と権力の正統性;「昔の民族」と「熊」と「デルタの秋」―「白人の血」という檻 アイザック・マッキャスリンの人種的思考;「猟犬」と『村』と『館』―三つのミンク・スノープス象とフォークナーの変化―改変作業の意義を読む)
第2部 ウェルティに見る間テクスト性―フォークナーのテクストとの接続に向けて(「記憶」と『楽天家の娘』―「母と娘」の物語 サザン・レディのアイデンティティの問題をめぐって;『響きと怒り』と『黄金の林檎』―ウェルティのクエンティン・コンプソン 家父長的物語への共感と抵抗感;「乾いた九月」と「緑のカーテン」―「土埃」と「雨」 ウェルティというレンズを通してフォークナーを読む)
第3部 神話・お伽噺/歴史・伝説―両作家のテクストと外部コンテクストの関係性(『行け、モーセ』と「旧南部神話」/「黒い野獣の神話」―「名誉」と「尊厳」 家父長的物語の枠組みと黒人の抵抗;『盗賊のおむこさん』とお伽噺/歴史―お伽噺的な読みの束縛からの脱却 二重性のテーマ再考;『デルタの結婚式』と旧南部の伝説―自足的なお伽の世界の魅力と限界 内外の眼差しの交差と非交差)
著者等紹介
本村浩二[モトムラコウジ]
1967年生まれ。現在、関東学院大学教授。明治学院大学卒業。青山学院大学大学院博士課程単位取得退学。専門はアメリカ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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