内容説明
10年続いた戦争が終わった。略奪と暴力の中で運命を待つ女たち…これはただの反戦劇ではない。戦争と宗教の本質に迫る悲劇である。名高いギリシャ悲劇が、新訳によって新たな息吹を吹き込まれる。観る前に、観た後に、一読すれば舞台への興味が倍増する解説つき。
著者等紹介
エウリピデス[エウリピデス][Euripides]
前480年サラミス島生まれ。画家から悲劇作家へと転身。26歳で初めて悲劇を発表。作品総数は92編。うち19編が現存。ディオニュソス祭演劇コンテストで5回優勝。劇の導入や結末に神(機械仕掛けの神)を登場させる劇作法を多用したことで有名。2度結婚し息子が3人。前406年、アルケラオス王に招かれマケドニアに滞在中、客死。享年74歳。アイスキュロス、ソフォクレスとともに3大悲劇作家の一人とされる
山形治江[ヤマガタハルエ]
ギリシャ悲劇研究家。翻訳家。日本大学生産工学部教授。1959年群馬県生まれ。津田塾大学英文科卒。ロータリー財団奨学生として英国ケント大学に留学。早稲田大学大学院西洋演劇学科博士課程満期修了。ギリシャ政府給費留学。2003年度湯浅芳子翻訳賞受賞。2011年度AICT演劇評論家協会賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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松本直哉
27
誇り高い古都が、小さな子どもも含めて皆殺しにされ、まるごと焼き打ちにされて炎上するのを目の当たりにしつつ、わずかに生き残った女性たちが、奴隷として連行されるのを前にして、滅びゆく町を悼み、悲しみ、敵を呪う。このトロイアの町こそ主人公で、女たちは町への挽歌を捧げるコロス(ヘカベは合唱隊長)であると言えるだろうか。とりわけ、亡夫ヘクトルの遺子を目の前で奪われて虐殺されるアンドロマケの嘆きに胸を突かれる。冒頭の神々の不吉な予言に、女たちの呪いが加わって、勝者であるかのように見えるギリシャに迫る破滅が予告される。2024/05/14
葛
1
著者:エウリピデス 訳者:山形治江 2012年11月20日 初版第1刷印刷 2012年11月30日初版第1刷発行 発行者:森下紀夫 発行所:論創社 編集者:高橋宏幸 装幀:宗利淳一+田中奈緒子 印刷・製本:中央精版印刷 組版:フレックスアート 定価:本体1500円+税2023/12/14
SK
1
115*敗戦国の女性の嘆きが、しみじみと伝わってくる。お国のために死ぬのが美徳という考えは、この時代にもあったのかな。辛い生か、死か、どちらがマシかという問題は、現代でも解決していない問題ではないだろうか。含蓄ある台詞が多く、興味深く読んだ。駄作とは思わない。2018/06/19
fantamys
1
悲惨。2017/08/09
Tan Tan
1
ギリシャ悲劇のトロイの木馬の作戦によって敗戦したトロイア軍の女たちの芝居。 へカベとヘレネの口論シーンと終幕のへカベの長台詞の持つパワーがすごい! 老いてると自身でいいながら生命力は劇中で1番あるという素敵な役(笑) 女優は興味惹かれる役の一つのような気がするな。2016/09/14