内容説明
下層庶民の苦悩を描くクライム・ストーリー。草創期を代表する作家の作品集第1弾。
著者等紹介
山下利三郎[ヤマシタリサブロウ]
1892年、四国生まれ。別名山下平八郎。幼い頃、一家で京都に移った。叔父の家を嗣いで山下姓を名のり、額縁商を営んだりした。『新趣味』の懸賞に応募し1922年12月号に「誘拐者」、23年2月に「詩人の愛」が当選、同誌に掲載された。1923年4月には「頭の悪い男」が、江戸川乱歩のデビュー作「二銭銅貨」とともに『新青年』の誌面を飾り、乱歩をして「あなどりがたい」と怖れさせたほどであった。その後も3回ほど乱歩と同時掲載され、探偵趣味の会同人としても健筆を振るい、後には『探偵・映画』や『猟奇』の創刊に尽力した。1933年に平八郎と改名し、『ぷろふいる』に「野呂家の秘密」などを発表した。1952年歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ehirano1
60
「夜の呪い」について。探偵小説なのに謎解きよりも「君は名誉のため、僕は盟友のためだ!」という台詞や熊谷の寛容過ぎる態度が頭から離れません。2023/04/23
geshi
29
乱歩と同時期の探偵作家の選集。謎と猟奇に飛翔した乱歩とは違い、市井の人々の生活に根付いた地を行く探偵小説の方向性を示している。下層庶民の苦悩と帯では書いているが、時にユーモラスに時にペーソスたっぷりと時に強かに描かれていて、エンタテインメントとして昇華されやすい。『頭の悪い男』の突然大金を手にした男の困惑、『裏口から』のふとしたきっかけで犯罪に魅入られそうになる男の心の弱さ。読みなれない文章のハードルを越えればあるある話として現代でも通じる所がある。2016/10/03
cogeleau
1
冴えない小学校教師、吉塚亮吉の日常生活の中で起きる出来事の数々に文芸的な味わいを感じた。本格推理とか謎解きとかの面から言えば物足りなさが指摘されるのだが、語りの中に「頭の悪さ」を疑いながらも思いをめぐらす渋さに筆致の確かさを感じる。探偵風味が加わるだけで文芸作品はこうも楽しめるものだと思えた。☆☆☆☆ 2024/02/09