内容説明
12月、雪のニューヨーク。その夜、一体の異様な死体が発見された。雪のなかに埋まっていた若い女性の死体は、なんと熱かったのである!精神科医ベイジル・ウィリング博士が捜査に乗り出し、娘のお披露目パーティにすべてをかける義母や軍需品会社の経営者、ゴシップ記者といった人物による無意識の行動をつぶさに検証する。その先に浮かぶ恐るべき意図とは?サスペンスや短編にも長けたマクロイのデビュー作にして、傑作本格。ベイジル・ウィリング初登場作品、ここに刊行。
著者等紹介
マクロイ,ヘレン[マクロイ,ヘレン][McCloy,Helen]
1904~92。ニューヨーク生まれ。新聞社で編集主幹を務めていた父親を持つ、早熟の作家。パリのソルボンヌ大学への留学時に小説や評論を発表。ミステリでのデビュー作は『死の舞踏』(1938)。『読後焼却のこと』(80)でネロ・ウルフ賞を受賞。一時期、ハードボイルド作家のブレット・ハリデイと結婚していた。また、女性として初めてMWA会長を務めた
板垣節子[イタガキセツコ]
北海道札幌市生まれ。通信教育課程にて慶應義塾大学文学部を卒業。インターカレッジ札幌にて翻訳を学ぶ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Kircheis
112
★★★☆☆ ヘレン・マクロイの初長編にして、ウィリング博士のデビュー作。 心理学的アプローチで殺人事件を解決する本格推理といえばまずヴァン・ダインのファイロ・ヴァンスシリーズが思い浮かぶが、マクロイはそこにより特化している。 雪の中に埋まっていた死体が何故か熱かったという冒頭の謎でつかみはバッチリ。ただしウィリングのやや強引な分析には素直に頷けない部分もある。 ちなみに私は序盤(関係者全員への訊問が終わった辺り)で犯人も動機も分かってしまった。その点で特に印象に残った作品でもある(笑)2019/12/15
セウテス
66
ウィリング博士シリーズ第1弾。〔再読〕マクロイ氏デビュー作品。12月のニューヨーク、積もった雪の中より発見された女性の遺体は、極寒の気温にも関わらず驚く事に異様な熱を帯びていた。探偵役にウィリング博士を置き、犯人が残すうっかりミスを探し出すタイプのミステリ。謎も魅力的であり物語に入り易い展開は、推理に集中するには素晴らしい設定です。真実に向かう伏線がたいへん的確に張られていて、純粋に謎解きを満喫出来ます。ただし日本語に翻訳すると表現出来ないヒントが在り、それが意外な動機に繋がるのは非常に残念でしかない。2017/10/20
藤月はな(灯れ松明の火)
45
精神学者、ベイジル氏シリーズ、第一作でヘレン・マクロイのデヴュー作。雪の中から社交界デビュー予定の女の死体が発見された。しかし、その女は身体は焼けつくように熱く、顔は真っ黄色になった状態で発見されたのだ!エゴイスティックな継母、富豪、ゴシップ記者など怪しい人物が出る中、ベイジルが導き出す真相とは。様々な事実を示す伏線が見事に張られているのに気づけなかった私はすっかり、騙されて怒るよりも感服する一方です。関係者に言葉での反応から炙り出していく様子は乱歩の『心理試験』を懐かしく、思い出しました。2013/12/07
はちてん
37
ヘレン・マクロイ1938年のデビュー作。探偵役である精神科医ベイジル・ウィリング博士登場。発端は大雪の夜雪溜まりで発見された若い女性の遺体。凍えるような夜にも関わらず遺体は発熱したように熱かった。ウィリング博士得意の人間観察から犯人に辿り着く。展開は暢気なほどゆったりとしているのに結末はどんでん返しなのだ。キチンと伏線が張られていた、やられた見逃した。殺人事件ではあるけれど、ホッとするような読後感は著された時代のせいか。ウィリング博士シリーズを追ってみたくなった。2014/11/20
さっちゃん
25
ベイジル・ウィリング博士初出。デビュー作品なので後年感じるキレはないが彼女の作風を感じさせる特徴は顕著だ。2016/02/01