内容説明
ピブル警視のもとに届いた一通の手紙。差出人は彼の父親の元上司である、ノーベル賞を受賞した老科学者。内容はすぐに来いというものだった。ピブルが向かった先はスコットランドの西の海に浮かぶ孤島クラムジー島。そこには永遠の都の建設に盲進する教団があった…。二年連続でCWAゴールド・ダガー賞を受賞した逸材によるピブル警視シリーズの異色作。舞台設定が奇抜な作品で知られるディキンスンの手腕が遺憾なく発揮された本書は、ピブルの警察退職の事情も明らかになるファン必読の一冊。本邦初訳。
著者等紹介
ディキンスン,ピーター[ディキンスン,ピーター][Dickinson,Peter]
1927年、ザンビア生まれ。イートン、キングズ・カレッジ、ケンブリッジといった名門校を卒業後、風刺雑誌『パンチ』の編集に携わる。1968年に発表されたピブル警視シリーズの第一作『ガラス箱の蟻』と、同シリーズの第二作『英雄の誇り』(69)で、二年連続CWAゴールド・ダガー賞を受賞。また、児童向けのファンタジー小説も多く発表している
井伊順彦[イイノブヒコ]
1955年生まれ。早稲田大学大学院博士前期課程(英文学専攻)修了。英文学者。トマス・ハーディ協会、ジョウゼフ・コンラッド協会、バーバラ・ピム協会(いずれも英国)各会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
25
最近、ちくま文庫で復刊した『生ける屍』の作者の作品であり、「解説 麻耶雄高」という帯を見かけてシリーズ物なのに思わず、借りてしまいました^^;幼い頃に亡くなった父と因縁のある我儘な科学者から「自分の論文が盗作されているかもしれない」という要請を聴いて科学者の所属している宗教団体の拠点でもある島へ渡ったピブル警視。しかし、耄碌爺の妄想かと思っていた事件は盗聴器の発見で一変する。凶暴な犬や追っ手を掻い潜り、分裂症の少女らと共に島を何とか出ようとする冒険活劇風も。なぜ、麻耶雄高氏が解説を担当しているのか納得(笑2013/09/07
bapaksejahtera
4
以前誰かの短編に載っていて読む気になった作品。スコットランド北辺の小島に建設を進めるキリスト教原理主義的な教団にノーベル賞受賞者の老人が加わっており、昔の研究上の技手だった男の息子であるこのシリーズ主人公の警部に助けを求める手紙が届く。主人公は島に向かい、教団幹部を構成する犯罪者集団を向こうに回して老科学者以下を救出するという趣旨。後半のスペクタクル中、事情が明らかにされようやく全体像が掴めるが、それまでは実験的/観念的/衒学的な記述の上、教団組織の非現実的な態様が気になって何度か通読を断念しようと思った2021/02/13
longscale
2
図書館本。一作目、二作目がいつまで経っても手に入らず、いきなり三作目の本書を……。なんだか不思議な書きぶりで、段々といろいろわかってくるつくり。小説の視点人物は普通、作者の都合でえらくいろんなことを見ているものだが、探偵役のピブルはどこか散漫で、しかも饒舌じゃない。肝心なことは喋らず、やたらと回想に耽る。信頼できない語り手というより信頼を拒む語り手で、むしろはぐらかされる読書が心地良い……。当初は『生ける屍』並みの駄訳を覚悟していたが、全然そんなことはなかった。旧約聖書の引用を拾ってくれているのが嬉しい。2025/02/05
よふかしとるねいど
1
ミステリを期待して読まない方がいい 前半は孤島の新宗教組織をお散歩して、合間に元学者の老人と腹の探り合いみたいなやり取りをする。教団の幹部と神学論争したりしながらまたお散歩してだんだんと島の全容が見えてくる それの何が面白いかわからないけど、なぜか結構面白く読めた 後半はまた色が変わって読みやすくなるけど、登場人物全員変人だし、ミステリと聞いて閃くミステリって風でもないので、人を選びそう 本国ではこれが結構読まれたのかな。そこが不思議でならない。面白いけどさ2011/12/15
Kom
1
麻耶の解説が、自作のスタンスと関連していて興味深い。2010/06/26