内容説明
脚本家ヴィクトリアの再婚相手は、映画プロデューサー。二人の共同作業となる映画の企画も着々と進行し、順風満帆と思われていたのだが…。ヴィクトリアの誕生日当日の朝、夫は客間で死んでいた。死因は毒殺。同じく毒殺死を題材とする新作を書いた彼女に疑惑の目が向けられた。事件は、悲劇と呼ぶにふさわしい結末を迎える。古典五十傑にも選ばれた、本邦初紹介作家の傑作本格ミステリ。
著者等紹介
ルイス,ラング[ルイス,ラング][Lewis,Lange]
本名ジェーン・ルイス・ブランド。1915年アメリカ、カリフオルニア州生まれ。南カリフォルニア大学を卒業後、ロサンゼルスで店員や銀行の出納係として働く。1942年に『Murder Among Friends』でデビュー。52年までにタック警部補をシリーズ探偵とした5作のミステリを発表した。また、44年にはジェーン・ベイノン名義でのサスペンスを、70年代には本名で普通小説を発表している
青柳伸子[アオヤギノブコ]
青山学院大学文学部英米文学科卒業。学生時代よりハーバード・ビジネス・スクールの事例研究などを翻訳。卒業後、大手事務機メーカーに就職。その後、フリーランスのビジネス翻訳家として独立し、幅広い文献の翻訳・編集を手がける。同時通訳養成所講師、国際会議事務局員も勤め、現在に至る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Panzer Leader
24
えらく久々に読んだ推理小説。読者のミスリードを誘う描写もあるが、犯人や動機はちゃんと示されているのにラストまで全く分からず作者の術中にハマりました。帯書きには「事件は悲劇と呼ぶにふさわしい結末を迎える」とあるが、それはちょっと違ってさわやかなラストだと自分には思えた。70年前の作品とは驚くが、その頃は正に戦争中のはずでその影も感じさせないのはもっと驚く。隠れた名作と言える出来なのに読んでいる人が少ない事こそ”悲劇と呼ぶにふさわしい”2016/03/02
空猫
20
埋もれた?名作。夫が妻の誕生日に毒殺されていた。毒を盛ることが可能なのは家政婦、妻の親友、妻とその元夫、の4人だが全員動機がない。ほぼそれだけの材料。後は徐々に進む捜査で少しずつ事件の経緯、容疑者の人物像が暴かれていく。特に派手なシーンもなくごくシンプルな内容。それでいて見事にだまされた。こういうのもミスリードって言うのかな。古典五十傑にも選ばれたらしい。論創社のこのシリーズ、少しずつ読んでいこうかな。2016/02/11
ブランドのアーメン
12
ミステリ黄金期の歴史に埋もれながらも、後年に脚光を浴びた古典的名作の一冊らしい。非常に人間観察と洞察、描写に優れている作品で、それがフーダニット、ホワイダニットを紐解く鍵になっていた。事件解決前と解決後に登場人物たちの印象を反転させる筆致はそうそうあるものではなく、文句なくとてつもなく面白い。2015/07/22
アカツキ
10
成功した脚本家ヴィクトリアはB級映画プロデューサーから結婚を請われて承諾。共同制作の映画の企画も順調に進んでいたが、ヴィクトリアの誕生日の朝、夫が客間で死んでいるのを見つける。死因は毒殺。奇しくも毒殺を題材にしたヴィクトリアの作品と同じ毒が使われていて…。思いもよらない真相に哀しくなり、そして最後のサプライズに驚く。文句なしに面白かった。2020/11/11
koo
5
ハリウッドで成功した女性脚本家自宅で映画プロデューサーである夫が毒殺される、ここまでが登場人物紹介をしながら僅か60ページで起こりそこから毒殺の機会があった容疑者への尋問、そして容疑者が(時間差で)一堂に会しての真相曝露と古き良き本格小説を楽しみました。殺人は1つで推理もロジックより心理面が重視されている所は少し気になりますが短めの長編ながらよくできた作品だと思います。2022/03/30