内容説明
本書は、東ドイツ社会に変革の嵐が起きる以前、社会主義体制が永遠に続くかに見えた時代の若者と愛情をテーマにした三幕ものだ。愛情、大人になるための葛藤、そして奇妙に歪んだ社会に順応する努力。さまざまな視点から、青春というテーマが語られる。
著者等紹介
カーター,フリッツ[カーター,フリッツ][Kater,Fritz]
1966年東ドイツのメクレンブルク・フォアポンメルン州生まれ。子供時代に両親と引っ越した東ベルリンで高校を卒業。1987年西ドイツへ移住。バイエルン地方でアルバイトを転々とする。ベルリンの壁崩壊後の1990年ベルリンへ戻り、戯曲を書き始める
浅井晶子[アサイショウコ]
1973年大阪府生まれ。京都大学大学院博士後期課程単位取得退学。2003年マックス・ダウテンダイ翻訳賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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法水
6
現在、『愛するとき 死するとき』のタイトルで上演中の原作戯曲(こちらは浅井晶子訳)。三部構成で、それぞれが独立した話になっている。句読点がまったくないというだけでも変わっているが、一部と三部はほとんど散文形式で通常の戯曲とは随分異なっている。本国ドイツでは2002年に初演されたこの作品、東西ドイツ分断時の東ドイツの若者の姿を切り取っていて、当時の空気感を伝えてくれるものとなっていた。2021/11/18
四葉
2
慣れとは恐ろしいもので、句読点のない本でも気づいたら抵抗なく普通に読めてた。 愛するってむずかしい…愛されていないとわかっていながら愛を貫き通すことはできるのだろうか。その孤独に耐えられるのだろうか。愛にのみ生きるはあまりにもろく儚く…。東西ドイツ分断による閉塞感のなか、より繋がりを求めてしまう人々の悲哀と青春の瞬き。 2021/09/26
nightowl
0
東ドイツの苦い青春物語が中心。読んでいるとBlankey Jet Cityのアルバム「BANG!」が頭に流れてきた。渋いモノクロのオムニバス映画のような味わい。世界の閉塞感を凝縮した戯曲。その点では全編散文詩風の第三部など文字通りの上演が難しい部分があるにせよ、時代を超える力がある。ジョン・オズボーン「怒りをこめてふり返れ」が好きならお薦め。2021/11/27