内容説明
陰鬱で閉塞的な地方都市ダブリンから希望に溢れる外界への脱出を夢に描き、挫折していく人々の生きざまを、幼年・思春期・成年・老年という人生の諸相においてとらえた短篇集。自然主義リアリズムと象徴主義、さらには「意識の流れ」の手法が複雑微妙に融け合い、壮大なるタブリン交響楽を奏でている。
目次
姉妹
出会い
アラビー
イーヴリン
レースのあとで
二人の伊達男
下宿屋
すこしの雲
対応
土
いたましい事故
蔦の日の委員会室
母
恩寵
死者たち
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KI
17
この街には感情の出口がない。2019/06/04
seer78
1
保坂和志『小説の自由』で「拡散的注意力」の例として引かれていた作品集。あのジョイスの初期短篇集とあって、やや気構えたが、意外とオーソドックスなリアリズム小説。ただし、どの短編も余韻がある。解説を読んでも、どの作品にも「なにか完結していない」印象を感じる。これが、リアリズムを徹底した果ての手法の崩壊の実例か!? 「対応」、「蔦の日委員会室」が僕には気に入った。最後にして最長の「死者たち」は周知の傑作。前半の賑やかな夜会と、後半のしっとりとした夫婦の対峙。これまた「完結していない」、別のありえた物語を偲ばせる2010/09/20
lico
0
初ジョイス。思っていたよりはずっと読みやすい。教科書にのっていそうな話が多い。何となく含みがあって、それなりの長さで、とりあえず落ちがある。解説でモーパッサンの名前が出ていたけれど確かにモーパッサンの短篇に通じるものがある気がする。15篇の短篇が納められており1、2作品は何かしら琴線に触れる作品に出会えるのではないでしょうか。『出会い』、『すこしの雲』、『いたましい事故』がよかった。『出会い』は子供時代を思い出して懐かしくなったからだけど、後ろの二作は読んでいて『月と六ペンス』と『異邦人』を思い出した。2015/09/17
久守洋
0
柳瀬訳で読んだので、解説のみ。2009/06/10
takeakisky
0
ところどころ面白かったのだけれど、大半は退屈な読書になった。最後の「死者たち」のゲイブリエルは収穫だと思う。読み了えるのに大層時間が掛かった。2023/03/21