内容説明
人間が人間として生きることがかぎりなく困難な時代と社会―その重圧の下で非人間化を深める被抑圧者の自由への翻身の契機を探りつづけたブラジルの教育思想家パウロ・フレイレ。世界中で読み継がれているその主著を読み解く。
目次
1 人間化と非人間化
2 被抑圧者による解放
3 人間であるということ
4 預金型教育をめぐって
5 死んだ時間と生きた時間
6 世界を読む―フレイレにおける識字
7 参加型調査とは何か
8 対話の諸条件
9 フレイレの革命論
10 フレイレの遺産の受容
著者等紹介
里見実[サトミミノル]
1936年生まれ。國學院大學名誉教授。専攻は教育社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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isao_key
10
『被抑圧者の教育学』はタイ語にも訳されている。本書は難解な原書から各章のエッセンスを抽出してまとめ解説している。特に有名な預金型教育について「被教育者に受動性を押しつけることを安易につづけていけば、生徒たちは世界を変えるのではなく、それに適応する行動習性を身につけて、頭にすり込まれた現実の断片に自分の間尺をあわせていくことになるだろう」と訳す。この部分の解説で、暗記して学んだ知識は試験でしか使えず、試験に合格さえしたらその知識は無用となる。学校で学ぶとはそういうこなのだと教えることだと強烈に批判している。2017/05/18
slowpass
1
ただのフレイレの解説本と思われるかもしれないが、思想家としての里見実氏と『被抑圧者の教育学』を含めたフレイレの諸著作の対話であると思う。相当に中身の濃い一冊。自分に大きく影響を与えた本だったので、著者に感謝の手紙を書いた。残念ながら体調を崩されていたのでご本人はもう返事ができる状態ではなかったそうだが、ご伴侶の方が代わりにお返事をくれた。里見氏からもらったものを自分も誰かに届けられたらと思う。
Seita
1
ブラジル政府がほとんど成果を上げられなかった識字教育で、フレイレのそれは45日でマスターに導いたという。まず、女性が農作業しているといった当地に身近な絵が提示される。次に、「何が見えるか」「なぜそんなに働かねばならないのか」「この状況解決に何ができるか」といった段階的な質問に導かれ、皆で議論を重ねる。このように共通の問題を示すことを「コード表示」といい、ここで問題が「意識化」される。このとき、キーワードが注目され、その音節がフラッシュカードに記される。参加者は音節配置を変えながら新しい言葉を発見していく。2018/01/13
Tomoko
0
確かに私も階層闘争の路線へと走ろうとしていたことに気づかされた。 抑圧者から解放されたとしても、自らが抑圧者になってしまっては仕方がない。 民衆と共に戦うことがいかに難しく尊いことか。 上を目指すんじゃなくて、同じ目線で戦っていけるだけの力をつけたい。2013/04/09
tu-ta
0
ぼくはすごく興奮して読み終わったら、先に笠井くんが読んでてびっくり。 (ここまでが2010年12月26日) 被抑圧者の教育学(新訳)を読み始めたのをきっかけにブログに、Tトゥギャッターってまとめたもの(2010年12月末)( http://togetter.com/li/82998 )から抽出してまとめた。 『パウロ・フレイレ「被抑圧者の教育学」を読む』のメモ http://tu-ta.at.webry.info/201502/article_6.html 2010/12/26