内容説明
食文化の研究は、人が何をどのように食べるか、というところに大きな興味が向けられる。そのため、「食べること」を前提として研究が開始され、展開される。しかし、それは人びとが集い、食を営む領域であって、じつはその否定形あるいは食が存在しない部分としての「食べないこと」「食べられないこと」には広大な荒野が広がっている。いわば食べることを享受する食文化の町の人びとから見捨てられた原野であった。本書は、食文化の町の住人が飢餓という異文化の世界への探検を試みた記録である。
目次
飢餓の荒野へ
第1部 歴史的事実から学ぶ(日本の飢餓―中世・近世から近代へ;中国における飢饉―1959~61年の飢饉を中心に;ヨーロッパにおける飢餓―「飢餓の40年代」をめぐって;牧畜民の飢餓観―中東を中心として)
第2部 現代の飢餓と飽食(飢餓と食料援助;栄養学的にみた飢餓と飽食;日本の飽食と食料の海外依存;飢餓と民主主義の倫理 ほか)