内容説明
全国の温泉地にあった「性の博物館」―性愛シーンの等身大人形や性にまつわる品々を展示した「おとなの遊艶地」はいまや消滅しつつある。等身大人形製造文化と日本古来の性信仰と娯楽産業が融合した文化装置を訪ね歩き、「身体の観光化」の視点から成立過程と消費されてきた実態を考察する。
目次
第1章 「秘宝館」とは何か(性が観光の対象となるということ;秘宝館をめぐる謎 ほか)
第2章 秘宝館の誕生(元祖国際秘宝館伊勢館の概要;秘宝館を生んだ松野正人氏 ほか)
第3章 秘宝館の発達(温泉観光地に生まれた秘宝館;温泉観光地に生まれた秘宝館と伊勢の秘宝館との断絶 ほか)
第4章 秘宝館の変容と新たな魅力の誕生(アミューズメント志向の秘宝館のその後;集大成・嬉野武雄観光秘宝館 ほか)
第5章 遺産としての秘宝館(あとから見直される身体模造;余暇の歴史から見る秘宝館 ほか)
著者等紹介
妙木忍[ミョウキシノブ]
1977年、高知県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。現在、北海道大学大学院文学研究科応用倫理研究教育センター助教。専門はジェンダー研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちゃんみー
54
まぁ、なんといいましょうか。表紙に惹かれて手にとったわけです(笑)元祖秘宝館である伊勢に近い(といっても隣県ってだけですが)ということから子供の頃からその存在は知っていました。子供心にいやらしいトコだけど、いつかは行ってみたいと思ってたのに、既に全国にある秘宝館は2件になってしまったとか(´・_・`)伊勢以外の秘宝館は温泉地にあり、景気の良かった頃に団体旅行していた殿方達が立ち寄っていたのでしょう。と思いきや、女性もターゲットにしていたんですね。最近ではアベックも多かったとか。知らなかった。⇒続く2015/09/16
つちのこ
39
昭和の終わり頃、テーマソングまで覚えてしまうほど、CMにしつこく流れていた伊勢の元祖国際秘宝館。今更後悔してもしかたないが、ずっと気になっていながら訪ねなかった。おそらく恥ずかしさが躊躇させたんだろう。1980年代に一世を風靡した秘宝館も今ではそのほとんどが閉館となったが、果たした役割は決して小さくない。温泉地とセットの団体旅行の目玉になり、大人がこっそりと楽しめるアミューズメントパークでもあった。それゆえ経済効果も大きかったはず。単なるエロ文化の発信基地というだけでなく、昭和の娯楽を担った文化遺産と⇒2023/07/19
鷺@みんさー
30
うーむ。図書館で見つけたので借りてみたんだけど、資料はふんだんで秘宝館の歴史がわかるものの、肝心の作者の論拠がいまいち弱いというか、茫洋というか、結局何がいいたいのか焦点があやふやな感じ。せっかく秘宝館を研究するのだから、もっと鋭い切り口でザックザク書いて欲しかった。ちなみに私は秘宝館行ったことないんだよねー。でも結構高いんだね。入館料1500円とかするのかー。今は熱海の一つを残すのみ。とはいえ時代の趨勢を考えると廃れるのも仕方ない。だからこそ研究という視点に期待したのだが。ちょい残念。2017/12/28
猫
10
図書館本。秘宝館という施設を、歴史と文化の観点から掘り下げている。誕生からピーク、内容の転変、衰退と、時代背景としっかり絡み合っているのだな。医学模型(伊勢のみ)・等身大蝋人形・性を祀る宗教・水を使ったアトラクションと共通点も語られる。ただ性のディープな部分は結構さらっと。性のアミューズメント化を目指したようだけど、そう考えると、昭和の遊園地がたくさん閉鎖されていったのと案外動きが被るんじゃないか。2018/12/21
軍縮地球市民shinshin
9
実は著者とはある研究会で名刺交換をしたことがある。なかなか面白い内容で、秘宝館という「キワモノ」を扱っていても手堅い手法できちんと纏められていた。これからの課題も最終章で指摘されていて、カバー表紙からは想像できない程(?)まじめな学術書である。ただ歴史的な考察に深みが足りないかなと思った。秘宝館(戦後)←衛生博覧会(戦前)←見世物(江戸)という図式を提示してはいるものの裏付けが弱い気がした。海外との比較もいいけど日本文化史での位置づけが欲しい。2016/09/05