内容説明
呪術から宗教への思考形態。ネミの《森の王》の実体は何か。原始社会の王の権力,すなわち信仰の中の呪術性に着目する著者は,東西の厖大な資料を博捜し,呪術の類感・感染という2大原理を軸に,王権の本質をえぐり出す。
目次
ネミの森の女神ディアーナとその祭司ウィルビウス
未開社会における呪術師と祭司
類感呪術と模倣呪術について
公共的呪術師の成立と王への発展
神聖な王権の出現と人神
「森の女神」と「森の王」の聖なる結婚
アルバとローマの王と神とユーピテル
ラティウムにおける母系血族制による王位継承と公職としての期限つき王様
「聖なる結婚」と「王の逃走」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てれまこし
4
柳田がその翻訳出版に反対したという書。皇室に関する記述は少ないし、それほど差しさわりがあるようには思えないが、皇室の高祖も呪術師であるという含意が危険だと判断されたのだろう。実際に、記紀神話とか皇室行事と比較可能な材料があちこちに転がっている。特に王権相続は本来は女系相続であったという点は国体を根柢から揺さぶりかねない。しかし、柳田が出版に反対したのは、必ずしもこの説に賛成したからでも反対したからでもないと思われる。民俗学・民族学が社会主義以上に危険であるされて芽を摘まれてしまうのを恐れたのであると思う。2019/08/04