出版社内容情報
本書は、沖縄の日本復帰(1972年5月15日)の前後から、沖縄および日本が孕む様々な政治的・社会的問題について沖縄の独自性を踏まえながら、真の平和創造とは何かという視点で発言しつづけてきた沖縄戦後史研究者の評論集・第8巻。新ガイドラインの策定、米軍基地の質的強化、アメリカの世界戦略への追随は、日本を本当に平和で豊かな国にするのだろうか。戦争協力の責任を問われる時代を自ら招き寄せようとしている日本に、著者は鋭い警鐘を鳴らす。
序
はじめに
[I]アメリカの世界戦略とガイドライン――安保再定義とは何か
1 沖縄から見たガイドライン改定
2 海上基地と新ガイドライン
3 安保再定義の裏に何があるのか――CO2・臨界前核実験・対人地雷そして……
4 政府は沖縄に何をしてきたか
5 四月十七日を忘れまい
6 冷戦後の世界をどうとらえるか――『相対化の時代』(坂本義和著)を読んで
7 参院選挙で何が変わるのか
8 わたしたち自身の敵は作るまい
[II]韓国の反基地運動とともに――東アジアの平和創造に向けて
1 二つの韓国
【補記】沖韓民衆フォーラムはできないか
2 沖縄の反基地闘争と東アジアの平和創造
3 世界的矛盾と地域の問題
4 ミサイル騒動に想う
5 韓国の実情に何を学ぶか
【補記】シンポジウム――韓国の米軍基地問題
[III]米軍用地強制使用の現在――特措法改定から地方分権委勧告へ
1 特措法改定から地方分権委勧告へ
2 公開審理から見た米軍用地強制使用の現実
3 米軍用地強制使用反対闘争のこれから
4 軍用地料を考える
5 基地労働者とともに基地の整理縮小を
【補記】基地労働をどう考結果とその後
【コラム】
◆阿片戦争と湾岸戦争
◆水爆実験と劣化ウラン弾――正義・公正・平和とは何か
◆民衆の闘いは時空を超える
■はじめに
この巻が対象とする一九九七年七月から九八年末までの一年半は、世界的な規模で、力の誇示・暴力化の傾向がいっそう強まった時期といえるかもしれない。インドやパキスタンの核実験も、頻発するテロも、そうした暴力化の拡がりとみることができる。だが、いうまでもなく、暴力化傾向の頂点に立ち、それを誘発しているのは、世界唯一の超大国アメリカである。軍事的な対抗勢力をもたなくなったアメリカは、自らの政治的経済的利益の追求や価値観の押し付けのために、安易に軍事力を行使する傾向をますます強めつつある。そして、軍事力行使の口実に、自由・人権・民主主義などの理念が使われる場合も、それは一皮むけば、政治的経済的利益の追求を覆い隠すかくれみのであることが多く、そうでなくとも、身勝手な思い上がりにすぎない。
九八年年頭の米英によるイラク攻撃の試みは、国連を舞台とする駆け引きによってかろうじてくいとめられたが、この年十二月、米英は、国連内部の反対意見を無視し、国連の活動を妨害するイラクを懲罰するためと称して、これを攻撃した。偽証疑惑による大統領弾劾訴追を回避しようとする政治的思惑も秘めながら。
また、ケニアやその他の公務員が憲法を「尊重し擁護する義務」を負っていることも、念頭にはないらしい。それは、国益を口にしながら私益をむさぼる高級官僚たちの底しれぬ腐敗・汚職と、どこかでつながっているのかもしれない。
こうした現実のなかで、NATOのヨーロッパにおける役割を、東アジアにおいては日米安保同盟によって果たさせるべく、新ガイドラインが策定され、関連法が整備されようとしている。それを可能にする状況は、むき出しの強権によってではなく、テポドン騒動や不審船騒ぎを使った世論操作によってつくり出されている。
こうした状況に規定され、それと深く関連し合いながら、沖縄の米軍基地再編統合強化政策とこれに対する闘いがある。
これまでの沖縄の反基地闘争の一つの柱は、反戦地主を主軸とする米軍用地強制使用反対闘争であった。その法的よりどころは、さかのぼれば憲法に行きつくが、米軍用地特措法それ自体でもあった。
戦争を放棄した日本国憲法の下にある土地収用法は、軍用地を公共用地と認めていない。したがって、米軍に土地を提供するための特別の土地収用法としての米軍用地特措法が必要であった。しかし、収用法体系に整合性をもた求める民衆の国境を越えた交流が、顔の見える関係を確立しつつある。とりわけ、沖縄と韓国の米軍基地に反対する運動が、日本各地の平和を求める人びとを巻き込みながら、着実に連携を深めつつある。わたしは、そこに、たとえ、わずかではあっても、東アジアにおける平和創造の希望を託したいと思う。
一九九九年五月
沖縄戦後史研究第一人者・新崎盛暉の評論集第8巻。新ガイドラインの策定や米軍基地の質的強化など、「戦争協力」に向けて驀進する日本に、鋭い警鐘を鳴らす。



