内容説明
反省はしないが、死刑にしてくれていい。開き直った犯罪者の事件が続く。秋葉原の無差別殺傷事件、茨城県土浦市の連続殺傷事件…。彼らは他人と自分の死を実感できていたのか。死刑にするだけでなく、なぜそうなったか、どうすれば防げるかを考えるべきではないか。そうでないとすぐ次の凶悪犯が生まれるだけだ。16歳で母親を殺害した男が再び犯した大阪の姉妹刺殺事件を追い、日本社会のひずみをえぐりだす渾身のルポルタージュ。
目次
1章 母親殺害まで(心閉ざし内面見せず;上下階に被害者、加害者 ほか)
2章 少年院(「超長期」に戸惑う現場;埋もれた母親殺害事件 ほか)
3章 二度目の殺人(絶望への旅路;支える人いれば ほか)
4章 では、どうすればいいのか(大人の発達障害と今後の処方箋;「発達障害をもつ大人の会」 ほか)
著者等紹介
池谷孝司[イケタニタカシ]
1988年共同通信社に入社。松江支局、広島支局、大阪社会部を経て95年から本社社会部で教育班や東京地検を担当。大阪社会部次長の後、2009年5月から本社社会部次長・文部科学省キャップ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みゃーこ
61
「発達障害というハイリスクな子じゃなくても、中卒で、ムショ上がりで、親がいないと大変ですよ。」アスペルガー障害という生きづらさに加え一人の人間に幾重にも重なった孤独という名の壁の厚さと転落のスパイラルはものすごいねじれ方をしながら高スピードで加速度を付けて落下していく。眼の見えない人間の苦悩を体感するように「共感」できない障害を抱えた者の苦悩をわかろうとする困難さを考える。アスペルガーの特徴以外にも彼特有の貧困から来るねじれ、性格上傷つくことを恐れるプライドの高さも生きづらさに関連していたと思う。そもそも2015/04/11
ナミのママ
59
第13回新聞労連大賞・疋田桂一郎賞受賞に加筆。16歳で母を殺害、少年院退院後、大阪で姉妹を殺害、25歳で死刑となった山地悠紀夫のルポ。…アスペルガー症候群と少しでもかかわった立場からいえば、「一生、支援が必要な病気」だったのに、という思いがします。しかし娘を持つ親として、わが子が理不尽、かつ残虐な殺され方をしたら、絶対に許すことはできないとも思います。再犯防止の支援が必要なのもわかるが、被害者支援だって十分でないのに、と思ってしまいます。感情的にも揺れ動き、理屈では割り切れない複雑な思いでいっぱいです。2015/05/14
ちゃんみー
56
発達障害の人が事件を起こしてしまった。単に人を殺めてしまった人と、その被害者を追ったものではなく、最後にはなぜ事件は起こってしまったのか?の答えをキチンと導き出していたのには好感が持てました。家族の在り方が芳しくなく子どもが育ってしまった結果じゃないのか?という結論付をすることが多いこの手の本ですが発達障害を持つ大人の会での会話を掲載するなどして具体的に犯罪が起こらないようにするにはどうしたらよいのかと模索しています。加害者被害者とも悲しい想いをする人が少しでもなくなればよいと思います。2014/10/21
ゆみねこ
55
実母を殺害し、少年院を出てわずか2年後に姉妹を殺害した山路悠紀夫。なぜ彼が残忍な犯行に至ったのか。人と上手くコミュニケーションを取れない、人の気持ちをくむことが不得手、障害を持つ彼の生い立ちがそうさせたのか。孤立が犯行を招いたのではないかという丁寧なルポ。感想を書きにくいです…。犠牲になられた二人の姉妹のご冥福を祈りたい。2014/05/19
も
47
2000年7月に母親を殺害、少年院で3年間過ごしたあと、2005年11月に再び殺人を犯す。自ら死刑を望み、2009年7月死刑が執行された山地悠紀夫の記録。最近は「アスペルガー」や「発達障害」という言葉が聞かれるようになりましたが、当時はこのような認識が薄く、少年院および出所後のケアが不十分だったのではと言われています。とはいえまだまだ発達障害についての認知は不十分で、再犯防止に向け、支援のあり方を考えなければならないと思いました。少年院などの更生施設だけでなく、一般にも広く認知されるべきだと思います。2015/06/08