感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
13
プレ「ライ麦畑」とも言える「マディソン街のはずれの小さな反抗」でまだ完全にキャラが固まっていないホールデンを見るのもいいが、神秘性がなくてサリンジャー本人のモチーフがダイレクトに出た他の作品群がより魅力的。ホロコーストや人種差別といった社会悪に対する透明な嫌悪感や、その愚行から生まれる哀しさをただ哀しさとして提出した飾り気のなさは一級品。中編の「倒錯の森」が病んだ芸術家の詩才と家庭問題の反復という問題の中に、絶望から生まれるユーモアや芸術家にありがちな人としての足りなさがくっきりと描かれているのが印象的だ2019/01/18
紅葉まんじゅう
2
「ラドフォードは草の上に仰向けにねそべって大きな綿雲が空をすべるように渡って行くのを見つめていた。おかしなことに、彼は太陽が一瞬、雲にかくれると目をとじ、それがふたたび真紅に彼のまぶたに焼きつくように戻ってくると目を開けた。むしろ心配なのは、彼が目をとじているあいだにこの世が終わってしまいはしないかということのほうだった。」「ブルー・メロディー」 サリンジャーの、子供時代の描写は、どうしてこんなに胸が締め付けられるのだろうか。失ってしまったから、か、まだ捨てきれていないから、なのか。はああ。2014/08/30
franny
1
五つの短編が含まれているが、何といっても中編「倒錯の森」が素晴らしい。壊れた詩人と、その詩人に壊される女の話。 あらすじがどうこうよりも、小説から発せられる光でぐいぐい読み進めさせる。文章の密度が高くなく、少しの隙間が文章にあり、その隙間から発せられる木漏れ日のような光。 思春期のせつない記述から始まり、大人になって少しずつ壊れていく人間達。その崩壊には思春期のせつない記憶が多大に影響している。俗世間では「精神的に壊れている」と呼ばれる芸術家達。しかしそれを「壊れた」と呼ぶのは果たして正しいのかな?2017/01/13
るぅ姉
1
ライ麦の元になる『マディソン街のはずれの小さな反抗』収録。解説にあった記述で、ライ麦は長編だが、短編の連なりで構成されているというのを読んで、あああ、、そうだねぇと思った。各エピソード、どれを抜いても短編で成り立ちそう。 この巻のお気に入りは、ブルーメロディと倒錯の森。ブルーメロディーはアーティストの話に人種差別を含む子供目線の物語。サリンジャーはアーティストの物語が3本?あるのだけれども、どれも好きだなぁ。サリンジャーの感想は言葉になかなかできなくて苦しい。とっても素晴らしい、くらいしか出てこない。2013/07/22
eirianda
0
昔、読んだ。初期の作品集。