内容説明
戦場のただなかで、災害の現場で、ひたすら人々の生と死を取材し自らの使命を問いつづけついにシリア、アレッポで凶弾に斃れた女性ジャーナリストの最後のメッセージ。2012年春、早稲田大学での講義の記録。
目次
早稲田大学Jスクール二〇一二年度講義(ジャーナリズムと戦争第1回現場へのこだわり 4月24日(火曜日)
ジャーナリズムと戦争第2回現場から伝える 5月8日(火曜日)
学生たちのレポート
ジャーナリズムと戦争第3回現場で考える5圧5日(火曜日))
早稲田大学政治経済学部講義(朝日新聞提携講座メディアの世界)(メディアと戦争 5月16日(水曜日))
山本美香の人と仕事(ジャーナリストとしての山本美香;同僚としての山本美香;教育者としての山本美香)
著者等紹介
山本美香[ヤマモトミカ]
1967年、北海道に生まれ、山梨県都留市に育つ。1996年よりジャパンプレスに所属し、アフガニスタン、イラク、シリアなど世界の紛争地域の現場から、人びとの置かれた現実を伝え続けたフリー・ジャーナリスト。2008年から早稲田大学においてジャーナリスト養成講座の講師として教壇に立ち、「なぜ戦争を取材するのか」を学生たちと議論してきた。2012年8月20日現地時間の午後3時半、シリアのアレッポにおいて政府軍の銃撃を受け、死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
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感想・レビュー
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スー
18
山本美香さんが早稲田大学で行った講義の記録です。山本さんが何故ジャーナリストになったか、知ること伝えることの大切さ、そしてジャーナリストとしての苦悩ピュリッツァー賞をとった「ハゲワシと少女」のように映像におさめるべきか助けるべきかの葛藤、取材対象にどれだけ近づけばよいか、写真や動画の撮り方によって伝えたい事が変化する恐ろしさを生徒達の質問に答えたりしながら分かりやすく説明してくれています。以前読んだ戦争広告代理店にもありましたが、伝え方によっては社会を間違った方向に引っ張ってしまう力がメディアにはある。2018/05/18
壱萬参仟縁
8
著者はイラク戦争でもバグダッド入りしている(7頁)。日本のCNNが目標だっという。だが、戦場ジャーナリストとして亡くなってしまい、そこまでして伝えなければならないことなどあるのかと思えてしまう。戦場としての福一原発も取材してほしいものだ。事実が明らかにならないので。需要があるので成り立っているようだが、評者には戦場の醜悪な情報など知りたくはない。そこまでしてすることではない。3.11で被災地入りされたのは敬服したい。最も厳しい現場に足を踏み入れ、彼女の家族は悲しみに支配されている。報道の意義とは何か再考。2013/05/20
Humbaba
4
相手から話を聴くためには、信頼関係を築くことが必要になる。自分の立場があると言うのは勿論そうなのだが、だからといってそれは他人の立場を無視して良いという理由にはならない。郷に入りては郷に従い、その上で相手との関係を気づいて初めて本当の気持ちというものを教えてもらえる。2015/03/05
林克也
2
「紛争の現場で何が起きているのかを伝えることで、その国の状況が、世界が少しでも良くなればいい、そう思っています。伝え、報道することで、社会を変えていくことができる、私はそれを信じています」信じて仕事をするって素晴らしいです。昨日、会社の指示でネットでストレスチェックした。このソフトでは私生活のストレスは評価の対象外なので、なんか茶番劇のようだった。で、自分に素直に生きていない自分には、仕事のストレスも無いってことか、なるほど、と思った。山本美香さんほどの目的意識を持てたらどんな人生を過ごしただろうか。2016/07/02
テツ
2
ジャーナリズムとは何なんだろうという話を年配の友人としていたらこの本を頂いた。何かが起きている瞬間、その現場に赴き世界に向けて現実を突きつけること。ともすれば蛮行が行われる戦場の様子。正義の名を背負う国々に空爆された後、死んだこどもを抱えて無表情で立ち尽くす母親。現実に起きている物事をそのまま映し出し、覆い隠されてしまいそうな残酷さを白日の下に晒すこと。ああ。彼女は真のジャーナリストだった。戦場で亡くなられたことが本当に惜しい。2013/11/06