出版社内容情報
新政府軍に敗れた旧幕兵たちは、甲州から奥州、箱館へと転戦してゆく。激動の幕末に旧幕陸軍・海軍のキーパーソンとして活躍した土方歳三と榎本武揚を取り上げ、幕府の解体過程を辿りつつ、二人の生き様を描く。
宮地 正人[ミヤチ マサト]
著・文・その他
内容説明
旧国家幕府の解体にいかに対処するのか?東征大総督有栖川宮熾仁親王が統帥する、薩長土をはじめとする新政府ヒタ押しの大軍は、東海・東山・北陸三道から江戸をめざしていた。これに対し、幕末京都で一会桑政権の一翼を担った新選組の土方歳三を旧幕陸軍の指標とし、幕府国家近代化の可能性を体現する榎本武揚を旧幕海軍の指標として具体的に追跡するが、ここに恭順派筆頭旗本勝海舟を投ずることにより、彼らの行動を構造化することを試みる。
目次
江戸開城の構図はいかなるものだったか
1 鳥羽・伏見戦争時にいたる土方と榎本
2 旧国家幕府解体の諸問題
3 江戸開城時にいたる土方と榎本
4 船橋戦争・遊撃隊・上野戦争
5 戊辰戦争時の土方・新選組・旧幕海軍
6 土方・榎本の箱館戦争
土方・榎本・勝の位置づけ
著者等紹介
宮地正人[ミヤチマサト]
1944年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中途退学。専攻、日本近代史。元国立歴史民俗博物館館長(名誉教授)・東京大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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とし
78
小説として知る人物、内容とは又違った維新や考え方人柄が解り知ることが出来ました。2019/03/08
厩戸皇子そっくりおじさん・寺
74
名著『歴史のなかの新選組』(岩波現代文庫)の宮地正人が書く、土方&榎本を中心とした幕臣達の戊辰・箱館戦争。薄いが読み応えがありお薦めしまくる。やはり歴史は作家の書くものもいいが、学者のものに圧倒される。これを読めば、筒井康隆『わが名はイサミ』等で唱えられる甲陽鎮撫隊を根拠とした「近藤勇バカ説」が誤りだとわかる。そして大村益次郎暗殺に関わると言われた海江田信義が案外いい奴だとわかる。そして今なお悪く言われる勝海舟の大変さもよくわかる。土方&榎本を取り巻く無数の無名人も登場。悪夢も伴う維新に嘆声をあげた。2019/01/31
Die-Go
44
戊辰・箱館戦争の中で、陸・海軍それぞれにおいて指揮を振るった土方歳三・榎本武揚の歩みを振り返る実録。小説と違い、感情の入る余地はほぼないものの、歴史を忠実に追っている。この本の行間を埋めるものが、小説として読みごたえがあるものとなるのだろう。★★★★☆2019/03/25
S.Mori
8
本書で白河戦争のことが触れられています。戊辰戦争の中心の戦いです。ライフル銃などの武器に勝る新政府軍はこの戦いで、佐幕派に大きなダメージを与えて、敵に700人もの戦死者を出します。土方歳三を中心とした新選組の生き残りもこのあたりになると、自分たちが追い詰められていることが分かったのではないかと思います。それでも戦い続ける気高さには胸を打たれます。土方は武士の出ではありませんが、武士以上に武士の精神を持っていた人物と、言えるかもしれません。2020/04/25
ぽんくまそ
7
「日本史リブレット」は本文の上に注釈がある。本文には多くの旧幕府側志士と言うべきサムライたちの名が次々に出てくる。その注釈を読むだけでも、一言に幕臣と言っても出自や経歴、のちの生涯が多種多様である。みなもと太郎「風雲児たち 幕末編」という大長編マンガをご存知だろうか。今、ようやく薩英戦争あたりだが、登場人物が多すぎるが挿話がいちいち面白いので端折る事ができず、なかなか時間が先に進まないマンガだ。おそらく、王政復古の大号令に差し掛かった後は、この本に出てきた旧幕府側風雲児たちが渋滞するほど出てくるだろう。2021/04/19