出版社内容情報
ライファーズとは終身刑受刑者のこと。米国の更生団体・アミティの取り組みを軸に、犯罪者たちが刑務所の中から再生していく姿に迫る
内容説明
再犯の連鎖から回復の連鎖へ。ひとは取り返しのつかない罪を償えるか。刑罰ではなく徹底した語り合いで暴力の根底に迫り、真の回復を模索するライファーズ(終身刑受刑者)、二十年のドキュメント。
目次
第1章 出発点
第2章 ツーソン
第3章 サンディエゴ
第4章 オータイメサ
第5章 サンイシドロ
第6章 サウス・セントラル
第7章 コンプトン
第8章 ランカスター
第9章 ワッツ
第10章 ロス・ルナス
エピローグ ティワナから―番号から名前への旅
著者等紹介
坂上香[サカガミカオリ]
ドキュメンタリー映像作家。1965年生まれ。1992年ピッツバーグ大学社会経済開発学修士課程修了。2001年までテレビディレクター。京都文教大学助教授、津田塾大学准教授を経て、2012年より映像作家の活動に専念。2004年にドキュメンタリー作品『Lifersライファーズ 終身刑を超えて』を自主製作。ニューヨーク国際インディペンデント映画祭で海外ドキュメンタリー部門最優秀賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
43
【重い罪を犯した者が、“真摯に罪に向きあい償うこと”は、可能か】 民間更生団体アミティは、刑務所や社会復帰施設で更生プログラムを積極的に行ってきた(AMITYとはラテン語で友情・友愛を意味する)。活動の特徴は、刑罰でも矯正でもなく、語り合いを通して、生き方そのものを変革していくこと。アミティ取材で、著者がよく耳にする言葉があった。「ライファーズのおかげだよ」。『癒しと和解への旅』を書き、アミティのドキュメンタリー映画「ライファーズ(終身刑受刑者)」を監督したドキュメンタリー映像作家による、魂の旅の記録。⇒2022/03/11
リップ
15
映画を見た後だったので、映像で見た受刑者達の顔や言葉を思い出しながら読むことができた。殺人、レイプ、窃盗、薬物…自分とは掛け離れたところで生きている人の人生は、ある意味小説やドラマを見ているみたいな、現実味に欠けたものとしてしか理解できなかった気がする。ただ、波乱万丈な人生を送ってきた受刑者やTCのスタッフ達はみな、プログラムを通じて今までに欠けていた愛情や友情、人との繋がりを経て人間味のある温かい人へ成長しているのが感じられた。アミティが企画した刑務所でのクリスマスパーティーのシーンが忘れられない。2015/02/12
tellme0112
10
ようやく、著者が何者かを知った。映画「プリズンサークル」の監督としてしか知らなかった。日本軍が起こした戦争犯罪、被害者への補償や尊厳回復のことにもこれつながるんじゃないかと思って読んでたら、最初からつながっていたんだ。日本の刑務所もひどいが、日本の外国人収容の制度のひどさをまた思う。2021/01/09
ののまる
7
映画「プリズン・サークル」を観たときに映画館で購入。どの刑務所にもTCが導入されると良いのに。日本の刑務所や入管収容は、古い体質の軍隊式だと思う。過去に向き合うチャンスや支援がない空間で刑期をつとめても、人間として扱われない状態で収容されつづけても、変わることはできない。多くの加害者は子どものときから被害者側であり、とすれば、社会が生み出してきた結果なのだから、社会で解決していかないと根本的な解決にはならない。そして、TCは刑務所以外でも、すべての人に有効な方法だと思う。2020/02/15
よきし
6
自身の罪とどう向かい合うのか。人はそもそも変われるのか。罪を償うとはどういうことなのか。そういったことを考えたいと思っていたときに、友人から坂上さんという映画監督の作品が素晴らしいという話を聞き、映画はなかなか見れなかったのでこの本を手に取りものすごく衝撃を受けた。そしてその後映画でも見て本当にそのとおりだと思った。個人の資質もないわけではない。しかし多くの犯罪は社会の中の抑圧によってそこに追いやられていることが少なからずある。社会的責任を個人化するという意味でも新自由主義的なのだと気づくきっかけとなった2021/05/05