出版社内容情報
完結まで36年を要したレリスの主著にして自伝文学の大作、20世紀の奇書。第1巻「抹消」は幼年期を綴る。(全4巻)
ミシェル・レリス[ミシェル・レリス]
著・文・その他
岡谷 公二[オカヤ コウジ]
翻訳
内容説明
未来が暗い穴でしかなかった日々の幼少期の記憶の執拗な重ね書き。“日常生活の中の聖なるもの”の探求。
著者等紹介
レリス,ミシェル[レリス,ミシェル] [Leiris,Michel]
1901年パリ生。作家・民族学者。レーモン・ルーセルの影響を受け、20歳ころより本格的に詩作を開始。やがてアンドレ・マッソンの知遇を得て、1924年シュルレアリスム運動に参加。1929年アンドレ・ブルトンと対立しグループを脱退、友人のジョルジュ・バタイユ主幹の雑誌『ドキュマン』に協力。マルセル・グリオールの誘いに応じ、1931年ダカール=ジブチ、アフリカ横断調査団に参加、帰国後は民族誌学博物館(のちの人類博物館)に勤務、民族学者としての道を歩む。1937年バタイユ、ロジェ・カイヨワと社会学研究会を創立。戦後、ジャン=ポール・サルトルらと雑誌『タン・モデルヌ』を創刊。1990年没
岡谷公二[オカヤコウジ]
1929年東京生。東京大学文学部美学美術史学科卒業。跡見学園女子大学名誉教授。著書に『南海漂蕩』(冨山房インターナショナル、和辻哲郎文化賞)など。訳書も多数ある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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syaori
43
聖書の世界の始まりは光ですが、レリスは言葉。最初「楽園」は、その束が天使を思わせたことからアスパラガスの風味がして、アルファベットは聖体のように味わうものだった。そんな私的なイメージのプリズムを通して語る幼年時代は煌めく迷宮のようで、何と魅惑的な王国なのでしょう。作者は自分の目(印象)を通した現実と真の現実、記憶と現実との間の距離に対する逡巡を吐露しますが、でもその過去と現在、夢と現実の間で揺れ動く記憶は、そのために神話、聖なるものとして光輝を放っているよう。意識の底にあった死の存在が強くなって次巻へ。2018/07/18
踊る猫
31
母国語で吃る人間こそ優秀な書き手なのだ、と語ったのは誰だったか。ミシェル・レリスもこの作品で立派に言葉を語り損ね、吃っている。だが、第一巻だけ読んだ印象では『失われた時を求めて』に比肩する文学だとは思えなかった。この巻がイントロダクションなのであって、ここから世界が広がるのだろうが……どうにもノンフィクション/手記と捉えても中途半端に感じられるのだ。『マルテの手記』やその他の詩人の散文を重ね合わせ、しかしそれらと比べるとさほど魅力が際立って来ないことに物足りなさを感じたのも確か。もどかしい読後感のまま次へ2019/06/06