内容説明
イヒカは深山で、ある子供と出会う。子供は謎めいた女によって山に閉じこめられていた。子供がイヒカに頼む―ぼくを助けに来て。大切なお守りの鏡を預かり、助けに戻ることを約束したイヒカ。だが二人は数奇な運命に呑みこまれてゆく。人間の尊い信義に胸が震え、緻密かつ壮大な物語に心奪われる、傑作大河ファンタジー。
著者等紹介
森谷明子[モリヤアキコ]
1961年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。2003年『千年の黙異本源氏物語』で第13回鮎川哲也賞を受賞してデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
F
27
昔々の日本を舞台にしたような架空の世界で、口から口へと伝えられる物語に秘められた謎と、それに纏わる人々を描いた作品。/すかさず再読。物語はつながり、広がり、続いていく。そういう「力」を感じさせてくれる一品。異なる語り部から伝えられた四つの物語が、やがて大きな物語を紡ぎだす様にゾクゾクした。素晴らしいファンタジーで精緻なミステリ。これは凄い作品だ。2013/03/18
おかむー
26
ファンタジー?ミステリ?なんと言おうか戦国以前の日本めいてるような十二国記みたいな中国めいてるような、世界設定の描写があやふやすぎて最後まで『絵』が浮かばなかったため入り込めなかった。まぁがんばって最後まで読みきってみれば『事実』が『物語』に変わってゆくその過程を大河ドラマ仕立てに謎解きからめて描いた作品だということがわかるのだけれど、設定上は濃くなってしかるべきキャラクターが全体に影薄かったり、さくさく読み進めるだけの牽引力には欠けていたのでなかなかの苦行だった。『可もなし不可もなし』。2014/01/26
風眠
22
深山に隠れ棲む者が自らの身を隠すために広めた話がやがて、うわさ話になり、昔語りになり、そしていつしかお伽話になっていく。超古代という舞台設定なのだけれど、現代的な感じと呪術的な雰囲気が混ざり合って、なんとも不思議な感じがした。それはまるで宮崎駿が描く世界のような、過去なのか未来なのかよく分からない独特の架空世界だ。古くから伝わる伝承や昔話は、きっとこんなふうに残っていくのだなぁ・・・と、果てしない時間の彼方に想いをはせる。格調高く美しい文体と、そこはかとなく漂う哀しみに魅了される、極上のフアンタジー。2013/04/24
朝霧
10
実際にあった話がやがて噂話となり、口伝えの昔話になっていく。そんな過程が観れる本。貴種流離譚とか三昧のお札とかいろんな要素が盛り沢山。あ、これはあれだな、あ、あれかー!ってにやにやしながら読んでしまった。2013/04/08
はたけ
8
現在、昔、言い伝えとして章ごとの構造の入れ替えが面白い(三枚の御札、ロシア民話が元らしいですね) 最初は時間軸が変わるのに戸惑うけど読み手に繋ぎ合わせを託してるのかな、と 最後に集約されて謎がとけるけど清々しく感じた ファンタジーだけどミステリ要素もある2014/09/23