内容説明
魚採りと虫採りに明け暮れたら研究者になった。普通種カマツカの秘密能力とは?スジシマドジョウ分類の秘策とは?
目次
第1章 研究のはじまり(はじまりはカマツカ;迷走修士課程)
第2章 カマツカの自然史(普通種という視点で;初期生態の解明;生活史の本丸;カマツカはなぜ普通種なのか?)
第3章 ドゼウ狂(スジシマドジョウの夜明け;ドジョウ新時代)
第4章 湿地帯に沈むまで(自然史の自習時間;昆虫採集との出会い;博士号取得後の展開)
著者等紹介
中島淳[ナカジマジュン]
1977年生まれ。九州大学大学院生物資源環境科学府博士後期課程修了。博士(農学)。九州大学農学研究院学術研究員、日本学術振興会特別研究員PD(九州大学工学研究院)を経て、2010年より福岡県保健環境研究所研究職員。2015年日本魚類学会奨励賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ばんだねいっぺい
32
湿地帯中毒というか、魚愛。水生生物という意味なのだろうけど。走光性など、論文のネタになるものを見つけるまでの苦労が十二分に伝わってきた。九州の地図上に置かれた複数の点がこの人の本物の情熱を示していると感じた。河川工事きっかけによる絶滅は、なんとかしなければならない。2021/12/31
tom
18
東海大学出版会の「フィールドの生物学」シリーズの一冊。このシリーズ、いずれも面白いのだけど、その中でもトップ3に入る本(私としては、トップ1は「裏山の奇人」なのです)。多くの川に住んでいる「カマツカ」という魚の研究書。希少種を研究する人は多いけれど、どこにでもいる魚は見向きもされない、でも、どこにでもいる魚は、どうしてどこにでもいることが出来るのか、その理由を知ることも、とても大切なことじゃないか。」という理屈を考えて、自分の愛する「カマツカ」を調べる。ひたすら一生懸命で、この一生懸命さに仰天。良書です。2017/06/03
全縁
9
おいかわ丸氏のこれまでの研究内容と半生をまとめた本。前半のカマツカの自然史(natural history)解明も、後半の日本のスジシマドジョウの分類も、たいへん面白く読めた。自分も自然史研究をやってみたくはあるが、ここまでの情熱と覚悟があるかというと......という感じ。ポスドク1年→学振PD→福岡県保険環境研究所の職員という流れで自分の研究を続けられたのはロールモデル感があって、うらやましい(といずれ思うようになりそう)。本筋には関係ないが、中高で悪魔召喚にはまっていたというのは爆笑してしまった。2022/05/14
T.Y.
9
学生時代には九州の河川でありふれた魚の一つであるカマツカの生活史研究から始まり、シマドジョウ類の分類記載研究へ。大学サークルでの水生昆虫採集も活かして、魚と昆虫を合わせた河川生態系の研究での研究員採用…。研究室配属時にまずは論文でなく投網を渡されたというエピソードに始まり、生き物が思うようにならない話はさすが現場の研究というのを感じさせる味がある。身近な日本の環境にまだまだ未知のことがあるのを教えてくれる一冊。最後は生態系や生物多様性の保全の話になり、なかなかテーマ的な奥行きも深い。2017/07/17
厩火事
4
お気に入りのシリーズから今度は湿地帯というか淡水の生き物の研究者の本が出ました。文章がとても読みやすい!研究に対してもうちに秘めたる情熱が感じられて良かったです。2016/12/04