出版社内容情報
大江健三郎と江藤淳は、戦後文学史の宿命の敵同士として知られた。その足跡をたどりながら日本の文壇・論壇を浮き彫りにするダブル伝記。(大澤聡)
小谷野 敦[コヤノ アツシ]
著・文・その他
内容説明
大江健三郎と江藤淳は、戦後文学史の宿命の敵同士として知られた。同時期に華々しく文壇に登場した二人は、何を考え、何を書き、それぞれどれだけの文学的達成をなしえたのか。また、進歩的文化人=左翼の大江と、保守派文化人=右翼であった江藤の言動から1950年代以降の日本の文壇・論壇とは一体どのようなものだったのかを浮き彫りにする。決定版ダブル伝記。
目次
第1章 出生―四国の森と海軍一族
第2章 出発―華麗なる文壇登場
第3章 決裂―反核平和主義と保守回帰
第4章 岐路―暴力への志向、学問コンプレックス
第5章 沈滞―純文学凋落の中で
第6章 ニューアカ・ブーム
第7章 栄光と終焉
著者等紹介
小谷野敦[コヤノアツシ]
1962年茨城県生まれ。東京大学文学部大学院比較文学比較文化専攻博士課程修了、学術博士。大阪大学助教授、東大非常勤講師などを経て、作家、文筆家。著書に『もてない男』(ちくま新書)、『聖母のいない国』(河出文庫、サントリー学芸賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
69
個人的な疑問としてなぜ江藤淳は自死してしまったのかという疑問があったのだが、本書を読む限り、病苦によるプライドの損傷と人生に疲れたという理由のように感じた。この二氏は掴みづらい方々のように思っていて読了後もその印象は変わらない。少しずつ読み解いていきたい。2018/08/20
北杜夫そっくりおじさん・寺
67
途中まで読んで一時中断していたが、少し読書欲も湧いて残りを夢中で読んだ。右寄りの文筆家と左寄りの小説家のダブル伝記。そして小谷野敦。面白い。小林秀雄をキッパリ「馬鹿」などと書いてあり驚くが、読んでいるとこういう言葉や寸評が飛び出すのは何となく読書にライブ感覚を感じて楽しい。どんどん右傾化する江藤淳が、死ぬ直前の妻にかけた言葉はウルッと来てしまった。おすすめです。2019/04/25
Bartleby
16
研究書ではない。お互いに対立しあっていた江藤淳と大江健三郎の評伝を1冊のなかで書くという面白い趣向の本。どちらのファンでもないが夢中で読んだ。小谷野氏らしく努めて客観的に書こうとしていないところが読ませるのだろうな。氏に言わせれば、大江は「学者にコンプレックスのある、いささかロリコン気味の、勉強家で酒乱の小説家」、江藤は「名誉欲にまみれた天皇礼賛右翼の批評家」だそうだ。ちょっと笑ってしまった。2023/06/21
タイコウチ
10
政治思想的には対極にあった江藤淳と大江健三郎の歩みを並列的にたどるダブル伝記。江藤にはあまり関心はなかったが、大江は80年代からしばらく愛読していたので興味深く読んだ。個別に思うところはあるが、著者とは同世代なので、社会情勢の推移など感覚的には理解しやすい。作品論にはあえて踏み込まず(とはいえ、そこここで歯に絹着せぬ鋭い短評はある)、雑誌の対談などからのゴシップ的引用が効果的で、二人の人柄が鮮やかに立ち上がる。大江の時にギョッとするような(おそらく計算を超えた)奇抜なユーモアを高く評価しており、共感する。2018/09/23
Gen Kato
7
江藤淳と大江健三郎の歩みを並列して描く。その視点がまず面白いし、作者特有の断定(作品や人格の否定)が良くも悪くも刺激的。ある時期までの大江しか読んでいなかったけれど、もっときっちり読みたいとも思えた。江藤淳の『漱石とその時代』、最初の二巻はいいと思って読んでいたのだけれどね(小谷野氏にかかるとバッサリ、でした)2018/09/13