出版社内容情報
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著者等紹介
堀辰雄[ホリタツオ]
1904‐1953。東京麹町生まれ。高校から大学時代に神西清、室生犀星、芥川龍之介を知る。関東大震災で母を失う。処女作は「ルウベンスの偽画」。ついで「麦藁帽子」「聖家族」「美しい村」。結核を患い、昭和十年代を信州富士見、信濃追分ですごす。戦中から戦後にかけて、立原道造、福永武彦などの若い世代に強い影響を与えた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
46
前半の印象は「西洋かぶれ、自己愛の強い身勝手な男」です。これにロマンを感じてしまうのが宮崎駿で、『風立ちぬ』で節子のことを「おまえ」と呼ぶことに抵抗感が無いかどうかがリトマス試験紙になっていると思います。引用も含めた散文詩の様な無根拠な文章を、さすがに西洋人の真似事は出来ない時代の現在に読者がどう読むか。『ルウベンスの偽画』や『燃ゆる頬』など、書いてあることは苦笑せざるを得ませんが、これくらい突き抜けるとかえって清々しいと感じるかも知れません。後半は一転して日本的な作品が続きます。『幼年時代』、「震災後」2022/02/21
優希
45
自然の描写が美しいですね。季節や自然を生かした作風に惹かれます。2022/03/20
tonpie
28
「風立ちぬ」のみ。芥川龍之介、萩原朔太郎、そしてプルースト。この系譜の上に、サナトリウムという「温室」を設計して、珍奇な植物を愛でるように、極限まで繊細なイメージを定着させている。散文詩の連続のような、人工的な文体。絵画で言えば、スーラの点描のような。堀辰雄の手にかかると、ボーっとしている午後の移ろいまでもが、極めて意識的な「詩」になる。読んでるコッチまで、上品で低体温で低心拍な病人になった気分だ。肺結核の婚約者を看病する話を、こんなに嬉々として描くこと自体が病気だと、目を背けたい気分が半分。 2022/09/08
かごめ
25
絶滅したと思われる文学青年にはこんなタイプもいた。賢さと豊かな感受性、恥じらいと傲慢さ、堀辰雄はときどきペンを置き、その手を病の微熱に触れる。彼が健康だったらという仮定は意味はないが、読者である青年たちは死を身近に仮想して、あるいは懸想していたのではないだろうか。かっての文学少女(自分で言っても十分恥ずかしい)は文学を語る先輩を憧れのまなざしで耳を傾けた。時は必ず経つ。死は選べないことを知る齢になったマダム?の純文学再読はプレミアシートでゆっくりとシネマを見ているのに似ている。→2018/05/15
佐島楓
21
堀辰雄というと、清廉な愛の物語ばかり書いていた人、というイメージを勝手に抱いていた。もちろん、代表作「風立ちぬ」を始めとしたそういった物語もこの本には収録されている。しかし、今回初めてちくま文庫版を読んだ私は、時代小説作家・堀辰雄、自分の出生に迫っていく人間・堀辰雄にも出会うことができた。いずれにしても、彼なりの美学やロマンを追い求めていた作家だったのだろう。違う形で読み返せてよかったと思う。2012/11/02