内容説明
条件づけられた人間が環境に働きかける内発的な能力、すなわち「人間の条件」の最も基本的要素となる活動力は、《労働》《仕事》《活動》の三側面から考察することができよう。ところが《労働》の優位のもと、《仕事》《活動》が人間的意味を失った近代以降、現代世界の危機が用意されることになったのである。こうした「人間の条件」の変貌は、遠くギリシアのポリスに源を発する「公的領域」の喪失と、国民国家の規模にまで肥大化した「私的領域」の支配をもたらすだろう。本書は、全体主義の現実的基盤となった大衆社会の思想的系譜を明らかにしようした、アレントの主著のひとつである。
目次
第1章 人間の条件
第2章 公的領域と私的領域
第3章 労働
第4章 仕事
第5章 活動
第6章 〈活動的生活〉と近代
1 ~ 5件/全5件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はっせー
110
3年近く積読であった。ある読書会に参加して読もうと思って決意して読み始めた。やっぱり難しい!ハンナ・アーレントさんは難解で有名らしいがその中でもこの人間の条件は難解らしい。たしかに色んな哲学者の言葉を借りながら自分の考えを紡いでいた。私がわかったこととしては人間は仕事、労働、活動の3つと思考に分かれている。仕事と労働の違いは消費と保存である。労働が消費で仕事が保存である。そして労働が資本主義と相まって浪費社会になってしまった。そのことによって環境問題などが起きてしまった。再読が必要な本である!2022/04/18
にいたけ
56
この本を読み終えた自分を褒めたい。(理解は別)人間とは何かを問うと個人個人のディテールは消えてしまう。アレントはそういう哲学的なものではない、目の前のあなた(何者:who)を問いたかった。だから「労働」「仕事」に「活動」を設けた。自分とは何かは自分の周りの人達が決める。虐殺によって絶滅させられたユダヤ人、彼らも自分の生き様があったのだと言っている様に思えた。冒頭での地球を俯瞰的にみている表現が良かった。自然を制御することが出来る人類になったことへの警鐘ととれば納得もできる。 2023/02/05
ころこ
54
多数の本で引用されているため、概略を十分に知ってしまっている。「私」と「公」の2分類、「労働」「仕事」「活動」の3分類が本書の要だ。「私」と「公」の分類は近代において社会を見出したことで変質したというが、範を取るのが古代ギリシャというところに無理があるのではないだろうか。当時の社会は奴隷制があり、「人間」とは一部の者たちのことだったはずだからだ。ここに3分類の議論がどのように繋がるのか明確ではない。少なくとも「活動」は言論を前提にしており、「公」すなはち古代ギリシャにおける政治に資する。現代の政治は社会の2023/10/24
ω
51
勉強のためω 「私たちが行っていること」を考える。 人間の最も基本的な要素となる活動力は「労働」「仕事」「活動」。労働はあくせく働く骨折り。→パンをつくる時間より消費する時間は短い。 仕事する人は自分の技巧に関心を向ける。→でも機械が順調に機能することの方が人間より価値があったりする。 活動のなかでこそ自らを確証。→笛を吹くような時、人間としての人間(ユニークな区別を持つ各個人) 5章までは割とすんなり入るけれど、6章でチンプンカンプンに陥った…… こんなんもたまには読まねばです( ^ω^ )2023/04/19
Y2K☮
49
人の活動を生命維持=カネの為にする「労働」と収入度外視で公の為に行う「仕事」、そして形に残らぬ言論等の「活動」に分類。古代ギリシアでは奴隷の役割だった「労働」が今や最上位。全てが使い捨てのご時世で我々は大量生産&消費の奴隷と化し、物の価値を値段で計り、カネに直結しない思想や哲学を役立たずと嘲笑う。家事も含めた生きる為の労働を卑しいなんて誰にも言わせない。ただ忙しさに埋没せず、余暇を見つけて公の為に考える時間を持つ様にはしたい。読書と読メはその手段に十分なり得る。創作もそう。労働ではなく仕事として取り組む。2016/11/25