内容説明
江戸期までの日本語は、日本の固有語である和語と、中国語から借用した漢語とが緊密に結びついて形成されてきた。そこでは、訓を媒介にして漢語の意味をとらえるシステムが働き、漢語が日本語にとっての「公性」を支えていた。しかし、日清戦争頃を境目として、使用する漢字を減らし、漢語をいわば「はずす」ような動きが起こった。近代国家へと変貌を遂げる過程で、日本語が初めて経験する人為的なコントロールとは?明治期の小学校教材を通してその全貌を追う。
目次
序章 明治期の日本語
第1章 『小学読本』前夜―和漢洋の成立
第2章 『小学読本』の時代―和漢洋の形成と定着
第3章 和語と漢語と
第4章 漢字から仮名へ―和漢洋から和洋へ
第5章 現代への問題提起
著者等紹介
今野真二[コンノシンジ]
1958年神奈川県生まれ。86年早稲田大学大学院博士課程後期退学。高知大学助教授を経て、清泉女子大学教授。専攻は日本語学。2002年『仮名表記論攷』で金田一京助博士記念賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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本命@ふまにたす
2
漢字、漢語の使われ方という観点を中心に、明治期の日本語を検討する。主に初等教育で使われた教材を題材にしており、図版も多数用いられているので興味深く読める。2022/05/12
がっちゃん
2
文献に分け入って、文献からその時代を体験する。その時代には、その時代の価値観がある。古典籍を扱う際には心に留めておきたい。2014/03/16
ざび
1
個人的には、テーマと読みたいこととがマッチしなかった。勉強になったのは以下。「飛立」は漢語にはない。飛び立つを漢字熟語化したもの。従って、漢語の読みがないので、「ひりゅう」という読み方自体も漢語読みに引きずられない完全な日本語。また、「大分」の「イタ」って日本語としてはいったい何だ?2014/04/15
ゆき
0
常用漢字表のあり方を批判したいのだということはよく伝わる… 明治の文献、教科書やノートなどが多く残っているのは「こういうふうに勉強してきたんだ」ということを知ってほしいからではないか、とありましたが今後それを我々読者も知る機会をつくってくださればな〜と思います。2017/05/13
yoneyama
0
多量の原典を引用して豊富な解釈が次々紹介されるのですが、もう少し消化したものを読みたいと思いました。期待していたのは、副題の「はずされた漢語」という部分だったのですが。私には消化不良でした。2015/08/17