出版社内容情報
『論語』はずっと誤読されてきた。それは孔子をシャーマンとして捉えてきたからだ。アニミズム的世界観に基づく新解釈を展開。東アジアの伝統思想の秘密に迫る。
内容説明
『論語』はずっと誤読されてきた。それは孔子をシャーマンとして捉えてきているからだ。だが、実際の『論語』はシャーマニズムではなく、アニミズム的世界観に満ちている。これは、森羅万象に生命が宿るという世界観ではない。人と人のあいだ、人ともののあいだに“いのち”が立ち現われるという思想である。『論語』を注意深く読みなおし、仁と礼、君子と小人といった概念を再定義するとともに、孔子本来の思想を再構築し、東アジアの古層に通底していた精神風土を追究する。
目次
第1章 東アジアの二つの生命観
第2章 孔子とは誰か
第3章 仁とは何か
第4章 君子と小人
第5章 孔子の世界観
第6章 孔子の方法論
第7章 孔子の危機
第8章 第三の生命
著者等紹介
小倉紀蔵[オグラキゾウ]
1959年東京生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科教授。東京大学文学部ドイツ文学科卒業、韓国ソウル大学校哲学科大学院東洋哲学専攻博士課程単位取得。専門は東アジア哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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りー
25
論語の全てが孔子の言葉や意図に沿ったものだと思わない方が良い、編者たる弟子の時代に既に変質し、孟子によって更に別物になっていった…ということは分かりましたが、更に謎が深まりました。解釈と訳文によって、同じ言葉が全く違った意味にとれる。何千年という時と言語の違いはやはり大きい。この本は一般的な解釈が理解できた上で読むべきだったと思うので、いつか再読したいです。2021/08/18
壱萬弐仟縁
13
キイワードは<アニミズム>(007頁)。一方、シャーマニズムは「天」という超越的な存在を信じ、その天と地上を媒介するシャーマンが地上に君臨するという世界観(013頁)。広辞苑によると、シャーマンは宗教的職能者とある。シャーマニズムは霊的存在との交渉を中心とする宗教様式。これを孔子は批判される。著者独自の新概念は、<第三の生命>と命名される(022頁~)。多様な生命観を人類精神史の中から抽出し、まとめたものという(023頁)。著者の<>付アニミズムにしているのにはワケがある。生命と非生命の区別(063頁)。2014/02/01
shouyi.
5
論語に関する本は毎年のように発行されその何冊かを私も読んでいるけど、《第三のいのち》という語でとらえ直して新しい読み方を見させてくれた。なるほど新しい。そして説得力もある2020/11/18
ゆうきなかもと
3
初めは一共同体の倫理にすぎなかった孔子の思想が、普遍的な倫理思想となったのが儒教であり、より普遍化させた思想が朱子学だ、という認識はあったが、普遍化の始まりが孟子からであり、そのものごとの捉え方まで、大きく転回しているという指摘は面白かった。 使われている用語がかなり特殊なので読みづらいが論理の運び方が、上手いので丁寧に読めば問題はない。 論語の初学者向けではないことも強調しておきたい。2014/10/08
かず
2
前著「入門 朱子学と陽明学」を興味深く読ませてもらったので、今回も期待して読み始めた。第1章では、仏教の本も好む私には、二元的な視点が鼻について感じられ軽い嫌気を感じたが、読み進めるうちに、「納得、得心した」とはいえないものの一定の満足感は得られた。儒教の読書を進めるうち、儒教に内在するルサンチマン的感情に嫌悪感を感じ、距離を置く昨今であったが、この本を読むことで、教条的で単なる文字の世界にしか感じられなくなっていた論語が、一転、血の通ったものに感じられるようになった。難しかったので、期を見て再読したい。2014/11/22