内容説明
アベノミクスはあやうい。ねらいは、小泉構造改革との決別、そして国家資本主義の復活なのだ。
目次
序章 経済無策からポピュリズムへ
第1章 正体不明のアベノミクス
第2章 「理念」と「思想」にうとい日本人
第3章 混迷のつづく日本の政治
第4章 日本経済の躍進と挫折
第5章 日本経済はどこへゆく
第6章 安倍総理いわく「大学力は国力そのものだ」
終章 国家資本主義へと歩む静かな足音
補章 福島原発事故から学んだこと
著者等紹介
佐和隆光[サワタカミツ]
滋賀大学長。京都大学名誉教授。専攻は計量経済学、エネルギー・環境経済学。経済学博士(東京大学、1971年)。1942年和歌山県生まれ。東京大学大学院経済学研究科修士課程修了後、同大学助手、京都大学経済研究所助教授、スタンフォード大学研究員、イリノイ大学客員教授などをへて80年より京都大学経済研究所教授。京都大学経済研究所所長、京都大学大学院エネルギー科学研究科教授、国立情報学研究所副所長などのほか、国民生活審議会、交通政策審議会、中央環境審議会の各委員を歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
23
アベノミクスは、保守とリベラルの対立軸を超越した、経済至上主義に徹する経済政策(28頁)。新古典派、ケインズ派、マルクス派の流派のどれにアベノミクスが位置づければよいのか、不明(54頁)。原理主義化するとは、伝統を包囲する側が、伝統が固有する原理・原則を否定するかのような脅威を、伝統を保守しようとする側に感じさせ、伝統を守るために、包囲する側に対する武力による報復を動機づけること(72頁)。ツッパリ、寄せ付けない印象。そこには広義の社会原理はないようだ。 2014/08/02
Francis
2
著者の佐和隆光氏の本はこれまでにも何冊か読んでおり、今回も出版され手間もない頃、中身をちらりと見て即購入。今話題の経済政策「アベノミクス」や55年体制崩壊後の日本の政治の混迷、「失われた20年」と日本経済の未来について論じているが、佐和氏の分析は相変わらず鋭い。2012年の総選挙で民主党が大敗したのはリベラリズムを掲げながら、経済成長策や雇用政策について無策であったからとも。いずれにせよ、この本のタイトル通り、日本経済の未来はどうも明るくなさそう。2013/08/22
Yoshiki Ehara
2
バブル経済からの日本経済の20年、そして55年体制崩壊からの日本の政治の20年を、極めて明解に示してくれている。これだけでも本書を手に取る価値は十分にある。しかし、本書はそれだけではなく、来た道の続きとしてアベノミクスを位置づけ、この先に続く道を示す。政治学から見ても、経済学から見ても、安倍政権とアベノミクスは異様なものだという。そして、アベノミクスの向かう先は、国家資本主義。私が読んだ本の中では、政治・経済のジャンルでは間違いなくここ数年のベストです。2013/07/25
yuki_s_run
1
アベノミクスの正体を明らかにすることを本書の課題とすると序章で述べ、その成否について判断を保留したとあとがきで述べている。また、サブタイトルにデフレ不況の経済学とあるが、筆者はデフレ不況から脱するためにはどのような政策が必要であると考えているのであろうか?今後の日本の政治や経済がどうあるべきかについての筆者の考えが分からなかった。2014/02/03
Hisashi Tokunaga
1
本書のあとがきに「本書がめざしたのは、「失われた20年」を政治経済学的に総括することだった。・・「失われた20年」につらなる正体不明なアベノミクスの政治経済的位置づけの明確化を、本書の課題のひとつにせざるをえなくなった。ただし、アベノミクスの成否について判断をくだすことはあえてさけた。なぜなら、アベノミクスは壮大な社会実験であり、対象が自然現象であれ社会経済現象であれ、一般に、「実験」の結果は予知不可能だからである。」としつつも、随所に安倍政権、アベノミクスへの政治的、経済的危惧と警鐘が見え隠れする。2013/10/17