内容説明
総力戦は同時に女性の社会進出もおしひろげた。戦えない性である女性は、愛国心をどう示したのか。カーキ・フィーバー、社会進出の象徴でもある制服への熱狂。大戦は女性をどう変えたのか、戦いのなかの女性を描き出す。愛国熱と制服フィーバーの時代。
目次
はじめに(カーキ・フィーバー;大戦がひらいた世界;制服の時代;生産か生殖か)
第1章 戦いを鼓舞する女(募兵ポスターのなかの女性;白い羽運動)
第2章 ベルギーの凌辱(「ベルギーを忘れるな」;ブライス委員会報告;イーディス・カヴェル事件―ベルギーに散ったイギリス人看護婦)
第3章 愛国熱と戦争協力(女性参政権運動の休止;女性警察―統制か保護か;別居手当と妻の監視;女性農耕部隊―農村における労働代替)
第4章 「戦う」女たち(銃後の世界から戦場へ―女性ヴォランティア予備軍;陸軍女性補助部隊;性的スキャンダル;「越境する女」への批判;女性戦士か家庭の天使か;「越境する女」の自己意識)
おわりに(セクシュアリティの戦争;大戦が変えたもの、変えなかったもの;「空」への扉)
著者等紹介
林田敏子[ハヤシダトシコ]
1971年生まれ。奈良女子大学大学院人間文化研究科博士課程修了。現在、摂南大学外国語学部准教授。文学博士。専攻はイギリス近現代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
麺
3
第一次世界大戦時のイギリスにおける女性の社会進出(特に軍隊への浸透)を、ジェンダー論の視点から説いた本。愛国主義・労働力の確保・旧守なジェンダー観とが綱引きをしながらイギリスの社会が変質していく様子を、当時のポスターや手紙の豊富な引用と共に知ることができる。読みやすく楽しい本でした。2018/09/15
ワッキー提督
3
第一次大戦という特異な環境下で、女性がどのような形で総力戦への貢献を果たしたのか、それがどのように当時社会から見られ、どのような変化をもたらしたのかを論じる一冊。とくにジェンダーについて深く学んでいない当方にも難しくなかった。良心的兵役拒否の男性に関する事柄と同時に見ていくとさらに興味深い内容である。筑波大学図書館にて。2014/02/24
晴天
1
第一次大戦においては、総力戦で女性の「男性の職場」への動員が必要になったといえども依然として期待される性的役割は固守され続け、軍隊で働く女性も頑なに軍属扱いにとどまり、しかも戦後には復員兵に仕事を譲るべく「男性の職場」から排除された。本書では、第一次大戦に際した女性の社会進出が、制約と弁解に満ちていたことが紹介されている。しかし異性装(ズボンを履くこと)をするだけでスキャンダルとなる時代においては、女性が制服を着て「男性の職場」で働くだけでそのインパクトが強烈だったであろうことも窺わせる。2017/01/15
Kawashima Kenta
1
教科書では、「総力戦下で女性が軍需工場に動員され、この働きが戦後の社会進出につながりました」というテンプレ。わかりやすいけど、世の中そう急に変るもんじゃない。やたらとわかりやすい結論を求められがちだけど、そうもいかんのよ。そこを掘り下げるのが勉強していて楽しいし、仕事のやりがいにもなると思うのだけど。 「志願して戦場にでた女性」と「兵役拒否した臆病な男」のどちらが参政権にふさわしいか、という問いが面白い。性別ではなく国家への貢献度が判断基準になるという価値観の変化を象徴している…気がする。2014/02/05
えかけさす
0
ポスターの紹介がメインでもう少し2014/02/26