内容説明
厳格さで知られる初老の美術鑑定士と決して姿を見せない謎の女。美術と骨董とオークションの世界に彩られた鮮やかなミステリー。『ニュー・シネマ・パラダイス』の監督による初めての原作小説。
著者等紹介
トルナトーレ,ジュゼッペ[トルナトーレ,ジュゼッペ] [Tornatore,Giuseppe]
1956年イタリア・シチリア島生まれ。映画監督。『鑑定士と顔のない依頼人』初の小説作品
柱本元彦[ハシラモトモトヒコ]
1961年大阪生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。ナポリ東洋大学講師などを経て、現在は大学非常勤講師、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
49
わずか100頁足らずで展開されるのは映像的な疾走感がありながらも脳裏に焼き付く場面の数々。それは映画のフィルムをコマごとに銀幕に観るが如し。一流のオークショナーでありながら贋作の流通にも精通している主人公は一度も姿を現さない依頼人に翻弄されつつも彼女に惹かれていくが・・・。レヴィナスの「顔=他者」論を捻ったような、顔が見えない=謎めいているからこその羨望。アンリ・バリビュスの『地獄』や安倍公房の『箱男』、『源氏物語』に共通する、覗くことによる安心感と恋情の燃え上がり。だからこそ、ラストのオチは皮肉そのもの2014/04/30
やっち@カープ女子
44
映画監督の小説だけあって動作を追う言語描写が多く、映像が浮かんでくるよう。もちろん文章も良いがやはりネタバレになるので映画を先に観るべき。またこの映画が観たくなった。2015/11/29
akio
36
やっと観たかった映画を観ることが出来、積んでいた本書にも手を伸ばすことが出来ました。まず映画化する前のプロモーションの為の作品であるということが序文で語られます。小説のようで最初から小説ではない不思議な物語は、その経緯からかインスピレーションをよりダイレクトに綴っているように感じました。頁をめくるたび、あのシーンもこのシーンも巻き戻すように甦ってきます。「どんな贋作にも必ずどこか真実が秘められている」。ラストシーンのあの余韻が今また目の前に。奮えます。2018/08/10
Nobuko Hashimoto
26
Amazonプライムで映画を観て。ナチスがらみなのかなと予告編を見たらプラハが出てくる!絵画とプラハが出てくるミステリーとなれば逃す手はない! 結果、歴史的背景などは関係のない、現代のフィクションだったが、とても面白くて。見終わったあとものすごく引きずってしまい、あれはどう解釈すればいいの? 他の人はどう受け止めたのだろう?とネットで感想を読みまわり、パンフや書籍も入手して、どっぷり浸った次第。ブログにネタバレなしで記録。https://chekosan.exblog.jp/29365349/2019/04/13
スズコ(梵我一如、一なる生命)
18
映画鑑賞直後の読書。実はかなりヴァージル(役も訳者さんも)がツボで、映画、文章で2度楽しめさせてもらった。というか、このエンディングではヴァージルの人生が可哀想で可哀想で仕方ない。。。(「センセイの鞄」のようにソフトランディングを期待したけれど、そもそも恋愛モノではなかった。。。)映画の話になるが、古い芸術品に囲まれた超ヨーロッパ的な世界観が素敵。言語は英語(恐らくロンドン?)なのに、芸術はまるでイタリアの様だなぁと思っていたら、ジョゼッペトルナトーレ監督でした。DVDを欲しくなってしまった。。。2015/08/04