内容説明
フィレンツェで絵画修復技術を学び、ミケランジェロの天井画の修復工事にも参加経験を持つ主人公・御倉瞬介が巻き込まれる、名画に関わる不可解な事件。世界の文化遺産ともいうべき名画にまつわる、修復されない傷みに隠された「生と死」の謎を、キャンバス越しに冴えた観察眼で究明していく。驚愕の、柄刀美術ミステリーの傑作6編を収録する本格推理連作。
著者等紹介
柄刀一[ツカトウハジメ]
1959年北海道生まれ。公募アンソロジー『本格推理』への参加を経て、1998年『3000年の密室』でデビュー。明快な本格推理で好評を博している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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bibi
37
初読みの作家さん。実在する画家のエピソードを織り交ぜつつ現在のミステリーの謎解きをしていく。芸術家、凡人には持ちえない本能(?)真髄(?)狂気(?)でびっくりするような動機で事を起こしてしまう⁉でも、読んでいる間じゅう、なんかじんわり温かさを感じる。美術鑑賞は大好きなので、こういうのは大好物です💛💛2020/12/21
roomy
26
黄昏たゆたい美術館より先に読み始めたのに読み終えるのはぐっと遅くなってしまった。初めて絵画修復士が謎解きをする話を読んだ。息子の圭介くんや家政夫の加護さんがとても気になる。もっと彼らの事が知りたいが推理物なのでそうもいかないか。2013/04/26
usarlock
23
絵画修復士・御倉瞬介が絵画の周りで起こる事件を解決していく短編集。各話に出てくるフェルメールやモネといった有名な画家たちについての雑学が面白かった。勉強になります。ミステリ部分の内容については少し物足りなさを感じたが、全体的に雰囲気がよかったので次も読んでみようと思う。瞬介の息子、圭介くんや家政婦の加護さんがもっと活躍してくれるといいな。ところでこの作品、登場人物名が唐突に出てくる気がするのは仕様ですかね。2014/11/17
みなみ
22
絵画修復士の主人公御倉が、修復過程で事件に関わり謎を解く連作短編ミステリー。絵画の修復方法は初めて知ることばかりで、興味深かったし、ピカソやモネ、デューラーといった画家の名画にまつわる話も知れて面白い。ミステリーとしては、謎を自力で解くことはできなかったけれど、後から考えるとなるほどと納得できる。2022/09/06
やっす
17
ミステリに、名画にまつわるエピソードなどを絡ませて一つの作品にしたという趣の連作短編集。あまり美術や名画といったものに思い入れのない自分の様な読者には、美術に関する部分とミステリ部分とのバランスが程よく感じられて結構面白かった。収録作中では、絵画に関するエピソードと、伏線の忍ばせ方やその回収といったミステリとしての巧みさが光る『モネの赤い睡蓮』が個人的ベスト。この本を読んで、今まで全く美術に興味がなかった自分でも作中で扱われている作品を見てみたいと思うのだから不思議なものですね。続きも読んでみようと思う。2016/09/29