内容説明
網を打つ者。とどめを刺す者―。おのおのが技を繰り出し集団で鯨に立ち向かう、世界でもまれな漁法「組織捕鯨」を確立し繁栄する紀伊半島の漁村、太地。しかし、仲間との信頼関係が崩れると即、死が待ち受ける危険な漁法であるため、村には厳しい掟が存在した。流れ者。己の生き方に苦悩する者。異端者―。江戸から明治へ、共同体で繰り広げられる劇的な人生を描いた渾身作。
著者等紹介
伊東潤[イトウジュン]
1960年、神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学卒業。外資系企業に長らく勤務後、文筆業に転じ、歴史小説や歴史に材を取った作品を相次いで発表している。『国を蹴った男』(講談社)で第34回吉川英治文学新人賞を受賞。『黒南風の海 加藤清正「文禄・慶長の役」異聞』(PHP研究所)で「本屋が選ぶ時代小説大賞2011」を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoshida
223
江戸時代から明治11年の大脊美流れまで、和歌山県太地の古式捕鯨の栄枯盛衰を描く。迫真の捕鯨の描写。捕鯨の隆盛と共に栄える太地。米国の捕鯨船による乱獲により、減る鯨。やむ無く危険な捕鯨をし、禁忌とされた母子の大脊美鯨に挑んだ太地の捕鯨船団は一度は脊美鯨を捕らえるも、遭難し多大な犠牲者を出す。本作で国内未曾有の海難事故の大脊美流れを初めて知った。吉村昭さんの「漂流」を思い出す。鯨に挑む男達の勇気、矜恃、覚悟が時代を変えながらも熱く伝わる。さらに鯨の解体や部位の利用等、資料的な貴重さも併せ持つ。大満足の名作。2017/09/02
takaC
159
おもしろかった。これを第1回高校生直木賞に選んだ高校生たちの審美眼はすばらしい。2017/02/03
文庫フリーク@灯れ松明の火
154
現在の和歌山県・太地町の古式捕鯨を知ったのはC・W・二コル氏の『勇魚』英国ウェールズ生まれの氏が描く、並の日本歴史小説を凌駕する筆致に驚嘆した記憶がある。『勇魚』の筆頭刃刺の息子主人公に対し、伊藤潤氏は古式捕鯨に関わる太地の人物6名の視点で描く、6編の連作短編集。残念ながら生きた本物の鯨は見たことが無い。ショーで実際見た鯱(シャチ)は最大でも10M未満、重さ10t。太地捕鯨の獲物となるセミクジラやナガスクジラは10M~25M、重さ30~80t。潮の流れや天候で「板子一枚下は地獄」と言われる海で、まさしく→2015/02/28
紫綺
143
江戸から明治にかけての太地の鯨漁をテーマに、人間の悲哀を描く中編6作。古来の捕鯨は一つの社会なんだ。反捕鯨団体に反発する太地の人たちの気持ちがよく解る。読友さんたちが話題にしてなかったら絶対に出会っていない秀作。2017/02/11
遥かなる想い
122
鯨取りの男たちの物語である。 雄大で 男臭さ満載の雰囲気が心地良い。 鯨取りの過酷な掟と 黙々と闘う男たちの骨太さが 心に響く。圧倒的な自然と 運命をそっと受け入れる男たちの潔さが ひどく印象的な作品だった。2021/11/09




