内容説明
故郷で悶々とした生活を送るなか、フレデリックに思わぬ遺産がころがりこんできた。パリに舞い戻ったフレデリックはアルヌー夫人に愛をうちあけ、ついに媾曳きの約束をとりつけることに成功する。そして、運命のその日、二月革命が勃発するのだった…。自伝的作品にして歴史小説の最高傑作。
著者等紹介
フローベール,ギュスターヴ[フローベール,ギュスターヴ] [Flaubert,Gustave]
1821‐1880。フランスの小説家。ルーアンで外科医の息子として生まれる。大学でははじめ法律を学ぶが性に合わず、創作活動に向かう。1857年、4年半をかけて書き上げた処女作『ホヴァリー夫人』が、訴訟事件が起きたという宣伝効果もあってか大ベストセラーになり、作家としての地位を確立した。晩年は長編『ブヴァールとペキュシェ』に精力をつぎ込んだが、完成を見ずして1880年、自宅で死去
太田浩一[オオタコウイチ]
フランス文学翻訳家。中央大学兼任講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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扉のこちら側
96
2016年380冊め。【187-2/G1000】坂道を転がるように落ちた一目ぼれから恋が始まったように、一見起伏に乏しいようなフレデリックの感情は激情とも言える。ただそれは、あまりよい方向には彼を導かず。アルヌー夫人、ダンブルーズ夫人、ロザネット、ルイーズの四人の女性の存在はおもしろかったし、革命のパリの雰囲気も感じられた。2016/06/07
藤月はな(灯れ松明の火)
90
『ルルージュ事件』がきっかけで知り合った読友さんの呟きがなければ、多分、読まなかった本でしょう。自由革命から二月革命へのフランス動乱期と共に男の愚かさも炸裂する巻。子供を妊娠し、堅気になる苦労も惜しまないロザネットを「売女」と罵り、意識して会わないアルヌー夫人へのあてつけでシジーに婚約を申し込む、結婚を迫るダンブルーズ未亡人になおざりに承諾するフレデリックに「最低・・・」と呻かずにいられない。同時に貴族の破産の悲惨やセネカルの変成ぶりに『レ・ミゼラブル』には書かれない革命と人間の暗部を見る。あゝ、無情。2017/04/16
のっち♬
63
アルヌー夫人への恋慕を募らせつつも、主人公は失意の中、肉惑的なロザネットや権力者ダンブルーズ夫人の愛人になる。故郷には彼を慕うルイーズも。四人の女性との並行した恋愛や、出会った様々な人から施される『感情教育』による彼の変化も魅力だが、二月革命の模様も生き生きと活写されており、人と歴史の動きを巧みにシンクロさせて、クライマックスを形成していく。ストーリーは次第にスピード感を増し、終盤は息をも持つかせぬ展開。離別の場面も美しい。「感情に重きを置き過ぎた」ために、政治面も恋愛面も実らない彼の姿が空虚感を残す。2018/07/20
NAO
63
めまぐるしく移り変わる時流にうまく乗った者もいれば、乗り切れずに破滅する者もいる。何度か代議士に打って出ようとしたものの、フレデリックは結局何にもなれないまま、女たちとの浮名を流し、ただ無為に財産を食いつぶしただけ。動乱の時代に生きるのは、大変なことに違いない。だが、この喧騒の中でのフレデリックの停滞は何としたものだろう。感情教育。教育というと、そこには良い結果が予測されるが、フレデリックにとっては、未来は明るいものではなかった。それでも、女たちとの恋愛経験は、彼をいくらか大人にしたのだろうか。 2017/01/12
星落秋風五丈原
44
【ガーディアン必読1000冊】青春の終焉。伯父の遺産を当てにしていたフレデリックは2/3を食いつぶし独身。フレデリックの親友デローリスは、フレデリックと結婚するはずだったロックの娘ルイーズとまんまと結婚するが、妻が歌手と駆け落ちして独身。マルチノンは上院議員、ユソネは新聞社を手に入れる。ベルランは写真家。セネカルは消息不明。アルヌー夫妻のモデルは、ユダヤ系ドイツ人モーリス・シュレザンジェとその妻エリザで、夫人はフローベールより11歳年上の25歳だったという。2023/09/07