内容説明
法律を学ぶためパリに出た青年フレデリックは、帰郷の船上で美しい人妻アルヌー夫人に心奪われる。パリでの再会後、美術商の夫の店や社交界に出入りし、夫人の気を惹こうとするのだが…。二月革命前後のパリで夢見がちに生きる青年と、彼をとりまく4人の女性の物語。19世紀フランス恋愛小説の最高傑作、待望の新訳!
著者等紹介
フローベール,ギュスターヴ[フローベール,ギュスターヴ] [Flaubert,Gustave]
1821‐1880。フランスの小説家。ルーアンで外科医の息子として生まれる。1857年、4年半をかけて書き上げた処女作『ボヴァリー夫人』が、訴訟事件が起きたという宣伝効果もあってか大ベストセラーになり、作家としての地位を確立した
太田浩一[オオタコウイチ]
フランス文学翻訳家。中央大学兼任講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
138
光文社古典新訳にて再読。最初の解説において、1789年のフランス革命から1848年の二月革命までのフランスの歴史についての簡単な説明があるのが大変にわかりやすい。大学での紛争や通りでのデモ、学生たちの語り合いが自然と理解できた。途中の注釈も多く、さらに理解を助ける。以前に読んだ時は、なぜこういう人間関係がおこるのかということをわかっていなかったと痛感。最初の船の場面でフレデリックがアルヌー夫人に見惚れるところは、ルコントの映画の「イヴォンヌの香り」を思い出し、夫人とイヴォンヌのイメージが重なった。2017/04/01
扉のこちら側
102
2016年379冊め。【187-1/G1000】上京してきた法科学生が人妻に一目ぼれをするのだが、恋や社交会での野心の反面、様々な不安に苛まれるために動けない。数年後、再び上京するが、そのきっかけとなるのも立身出世ではなく棚ぼたの遺産相続でお金持ちになったから、ということであまり魅力的には思えない主人公。彼の物語より、移り変わるフランスの世相の方が気になる。下巻へ。2016/06/06
藤月はな(灯れ松明の火)
90
自伝的小説を読むことは最もマゾヒズム的なのかもしれない。男性作家の場合は主人公の描き方に読者は同族嫌悪を催しながら読まずにいられないし、女性作家の場合は過去の自分を冷静に振り返る手腕に痛々しさと自虐すらも感じてしまうのだから。はっきり、言うとこの主人公のフレデリックは優柔不断で昔の武勇伝を懐かしく思うクズ男です。若さ故のどこか、ぼんやりした野心と恋のために「遺産が入ったらパリに行って社交界入りしよう」というフレデリックに「田舎で慎ましく、暮らそうよ~」と思ってしまう私は枯れているのかもしれません^^;2017/04/15
巨峰
82
とてつもなく長くて特に上巻の前半は話が全然すすまない。主人公がまったくのろくでなし。自分で何を生み出すわけもなく、何かをなそうとするわけでもなく、信念もなにもなくあっちへふらふらこっちへふらふら。叔父から棚ぼたで貰った財産を無駄に使っているだけなのに、妙に周りの人に対して上から目線。なんの共感も親しみも持てない主人公。それなのに、それなのに、この物語めちゃくちゃ面白いのは何故だろうか?(翻訳・訳注がすごくわかりやすい。写真や絵なども多数掲載されています) 2017/12/10
NAO
69
帰郷の船上で出会った人妻であるアルヌー夫人に一目惚れした法科学生フレデリック。彼の目を通して7月革命以降めまぐるしく変動するパリの社会情勢が描かれていく。いろいろ思うことは多いのに遠巻きに見ているだけで何もできない主人公には正直イライラさせられるが、その優柔不断さが実はとても人間的なのかもしれない。彼の周囲を取り巻くさまざまな境遇の青年たち、魅力的な女性たち。上巻ラストには思いも寄らない展開もあって、彼らがこの大きな変動期にどのように変わっていくのか、先が気になる。2017/01/11