内容説明
異形の怪人エリックは、愛する歌姫クリスティーヌに秘密の特訓を施して鮮烈なデビューをさせる一方、邪魔者には残忍な手を使うことも厭わない。とうとうクリスティーヌを誘拐し、追っ手を手玉にとったが…幾度も映像化・ミュージカル化されてきた傑作小説の真の「凄さ」を新訳で。
著者等紹介
ルルー,ガストン[ルルー,ガストン] [Leroux,Gaston]
1868‐1927。フランスの小説家。パリに生まれ、大学では法学を専攻。弁護士試補としてキャリアを始め、1894年にジャーナリストに転向。新聞の司法記者として活躍する一方で、1897年に小説『夜の男』、1903年には『宝探しの男』をともに「マタン」紙に連載。1907年には『黄色い部屋の謎』の雑誌連載が始まり、新聞社の職を辞す。ニース転居後、1910年に刊行された『オペラ座の怪人』が好評を博し、一躍人気作家となる。その後は短篇の戯曲化、映画の脚本なども手掛ける
平岡敦[ヒラオカアツシ]
1955年生まれ。早稲田大学第一文学部卒、中央大学大学院修了。フランス語翻訳家。中央大学講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
128
映画で見ているのでストーリーは知っていましたが、改めて読んでみると純愛とミステリアスな要素が混じっているんだなと思いました。怪人と称されるが為に、愛しの歌姫への屈折した愛情を感じます。彼女への想いがあればこそ、邪魔だと思う者にはどんな手段を使ってでも構わないと思うのがある意味怖さでもありました。愛しい人を恐怖で縛る屈折した想い。愛を求めればこその行為が哀れにも感じます。2017/01/15
molysk
74
お前を愛しているのは屍なんだ。おまえを崇め、お前からもう決して、決して離れない屍だ…――。歌手クリスティーヌは、姿の見えない音楽の天使の教えで才能を花開かせて、オペラ座の歌姫となる。幼馴染の子爵のラウールを客席に見出し、想いを通わせる。天使の声でオペラ座の地下へと誘われたクリスティーヌは、声の主が仮面の怪人であったことを知る。その仮面の下に隠した素顔を見られた怪人は――。その異形ゆえに人に愛されることのなかった怪人の魂を救ったクリスティーヌの愛情は、現在もミュージカルで歌い上げられ、多くの人の心を打つ。2023/03/05
藤月はな(灯れ松明の火)
70
2004年版の映画のリバイバル上映を観た為、再読。実は日影丈吉訳しか満足できない我儘体質になってしまい、「古典新訳文庫は大丈夫か」とハラハラするものの杞憂に終わりました(笑)特に「蠍を回すか、飛蝗を回すか」の下りは一層、ドラマチックになっている。再読するとクリスティーヌの跡をつけ回しては言動に一喜一憂し、罵るラウルに引いてしまう。そしてオペラ座の経営者交代での後継ぎで自身の立ち位置の確保に大変な最中、幼き思いで補正がある為にぽっと出のストーカーにクリスティーヌからの愛を掻っ攫われるエリックに涙を禁じ得ない2024/09/08
財布にジャック
69
大好きな「オペラ座の怪人」が新訳で発売されたのを知り、書店に走りました。読むのに5日もかかったのは、以前の角川文庫版のものと比べながら読んだ為です。内容は熟知しているものの、新たな訳で読むと新鮮で、現代の言葉で大変解りやすくなっていたので感情移入もし易かったです。ミュージカル版には登場しないペルシャ人やラウルのお兄さんの果たす役割の大きさを原作では堪能できて、違った側面から物語を楽しむことが出来ます。ファントムって幽霊って意味なんですが、決して幽霊なんかじゃない主人公の哀しい境遇に叉涙しました。2013/07/16
著者の生き様を学ぶ庵さん
44
長島訳よりもリアルな台詞回し。外見に恵まれないエリックの屈折した愛情が心に突き刺さる。この辺りが光文社古典新訳文庫のいいところ。2016/08/16