内容説明
不妊の補助的な医療として始まった生殖補助医療=ART。その技術が、生命操作にまで介入しようとしている。これは、子孫繁栄という人類普遍のニーズに応える福音か。それとも、不自然な欲望を掻き立て、新たな苦悩を与えるモラル・ジレンマの始まりなのだろうか―。生命倫理の視点から、私たちの人間観や家族観、親子関係に与える影響を考える。
目次
序章 倫理の追いつかない生殖技術
第1章 生物学的時計を止める―卵子凍結で、ライフプランを意のままに?
第2章 王子様は、もう待たない?―精子バンクと選択的シングルマザー
第3章 自分の「半分」を知りたい!―生殖ビジネスで生まれた子どもたち
第4章 遺伝子を選べる時代は幸せか?―遺伝子解析技術と着床前診断
第5章 生みの親か、遺伝上の親か―体外受精と代理母出産
第6章 「ママたち」と精子ドナー―多様な夫婦と新しい「家族」
著者等紹介
小林亜津子[コバヤシアツコ]
東京都生まれ。北里大学一般教育部准教授。京都大学大学院文学研究科修了。文学博士。専門はヘーゲル哲学、生命倫理学。映画や小説などを題材にして学生の主体性を伸ばす授業を心がけ、早稲田大学でも教鞭をとる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
108
問題提起の仕方と、臓器移植を含む医療行為も絡めたあたり、整理なされておらず読みにくい。作者としての結論も、分かりにくい。作者は医学でなく哲学者のようであり、ならぱもっとそちら側からのアプローチで語って欲しかったな。こういうタイプの医療も、コロナ前と後では変わっていくように思う。2020/04/30
すこにゃん
49
読友に勧められました。表題に反してやさしい文章でとても読みやすくほぼ一気読みでした。とても興味深く考えさせられる内容にあふれています。関連映画や本や実例も豊富に紹介され、日本の法律の立場や国による違いも書かれています。生殖医療は不妊治療から始まったものの、技術革新がもたらした想定外の事例(ベビーに5人の親がいたり同性愛者の子供願望)に法律が対応しにくい現状を知りました。でも確かに学んだ大切な事は、「親」が子供を欲しがる権利は総じて擁護されますが「生まれた人」の苦しみまでは配慮されにくいということです。2014/07/26
樋口佳之
22
LGBTの生産性との妄言で積ん読解消なのでした。/根治治療と救済治療。治療の結果として新しい生命が誕生する事の特殊性/生まれ育った子どもたちが自らの声を挙げ始めている状況/2018/07/28
陰翳rising sun
14
不妊治療や体外受精などのように、人の誕生はどんどん多様になる。精子バンクで父親を知らない。血の繋がらない子を妊娠する母。遺伝上の母と産みの母と養育の母、母が3人いることもある。出生前診断は命の選別なのか?どのような課題があっても、変わらない願いは生まれた子の幸せ。その子のアイデンティティはどうやれば守れるのか。著者があとがきに記したように、不妊治療などの当事者と非当事者とを繋ぐ架け橋になる一冊。生きるとはなんなのか。生まれてくる意味とは?2021/12/03
孤独な読書人
13
生殖医療がもたらす倫理的、法律的問題を実際の事例を通してみていく。生殖医療を利用する人々はたびたび倫理的な非難をされているように感じるが当事者たちがどのような経緯でそれを利用するのかということを知れることは重要。当然だがそれぞれの事情や考えがある。それを知った上でどのように考えればいいかということだが、現実的には生殖医療の利用を禁止することは出来ないと思う。また倫理的、法律的な問題を誰もが納得する形で解決することも出来ないと思う。2018/07/08