内容説明
東京大空襲の火炎地獄を生き延びた親子と、無差別爆撃の惨状に思い悩むアメリカ人青年とが織りなす物語。アメリカ人が日本語で書き下ろした戦争歴史小説の第二弾!
著者等紹介
フィスク,ブレット[フィスク,ブレット] [Fisk,Bret Prescott]
1972年アメリカ生まれ。1991年に初めて来日する。独学で日本語を覚え、大学で勉強した倫理学のほか日米関係の歴史に興味をもち、日本語で小説を書く。著書『潮汐の間』(現代思潮新社、2011年)。2010年「日本空襲デジタルアーカイブ」を創立する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
散文の詞
154
まず、アメリカ人作家が東京大空襲から、日本語で書いたことを評価したい。 戦争の悲惨さを伝えるには、スコップで灰をとか、想像を絶する記述には、悲惨さや哀しさを通り越して恐れを感じるほどだ。 第4部でも書かれているように、戦争に勝利したアメリカは正しい戦争だとして、忘れ去らるというのには納得する気もする。 ただ、全体的に上っ面をなでているような書き方が多少気になったのと、どうも会話に違和感が残る。 この辺りは、やはりアメリカ人作家だからだろうか。 2021/10/20
Porco
15
東京大空襲を描いた小説。しかも、米国人が日本語で書いたということに驚くし、日本人としてとても嬉しい。終戦後に東京を訪れる米国人も登場して、米国人にとっての東京大空襲を記憶することの意義についても触れています。もっと話題になっていい本ではないでしょうか。2016/08/07
korrya19
11
アメリカ人が日本語で書いた東京大空襲を中心にした物語。 1945年3月10日の東京大空襲自体についての物語には、そんなに新しさはないが、終戦後、空襲被害の調査にやってきたアメリカ人と、その通訳をすることになった女性との会話にはちょっと考えさせられた。 戦争の記憶をどんな形でとどめておくか、それはどんな体験をしたかということもあるが、その後どこに向かっていこうとするかにもよる。 そして、記憶とは個人的なものだけではなく、国家的、政治的なものでもあるのだと再認識。2015/02/27
watershed
0
東京大空襲の記述は静かな迫力はあるが、他の作品と比べると戦争の悲惨さを強調してはいない。戦時体制に批判的な牧師一家という設定は平板で、ドラマチックだった前作の潮汐の間と比べると物足りない。最後の章でこうした設定が生きてくるので納得はできる。 クライマックスは、アメリカの従軍牧師と空襲で母親を失った日本人女性のが戦争とこれからのアメリカについて応酬する。空襲を単に悲惨で非人道的な悪事と決めつける地点にとどまらず、倫理的に考える著者の思考を展開。息苦しいけれど過去の惨事を未来につなげるために不可欠だ。2016/12/07