内容説明
「しゃべるところ以上のところにふみだすことが、しゃべることを保つためにも必要だ。」戦時下の抵抗、ハンセン病の人びととの交流、ベ平連、朝鮮人・韓国人との共生…。さまざまな行動の現場にコミットし続けてきた鶴見俊輔。その思考と身ぶりの軌跡を初めてまとめたコレクション。文庫オリジナル。
目次
1 わたしのなかの根拠(「殺されたくない」を根拠に;遠い記憶としてではなく ほか)
2 日付を帯びた行動(いくつもの太鼓のあいだにもっと見事な調和を;すわりこみまで―反戦の非暴力直接行動 ほか)
3 脱走兵たちの横顔(脱走兵の肖像;ポールののこしたもの ほか)
4 隣人としてのコリアン(詩人と民衆;朝鮮人の登場する小説 ほか)
5 先を行くひとと歩む(コンラッド再考;田中正造―農民の初心をつらぬいた抵抗 ほか)
著者等紹介
鶴見俊輔[ツルミシュンスケ]
1922年生まれ。哲学者。雑誌「思想の科学」発行の中核を担い、ベ平連など社会運動にも携わる。評論も多く、その対象は社会問題から小説、大衆芸術までと幅広い
黒川創[クロカワソウ]
1961年生まれ。作家。十代の頃から「思想の科学」に携わり、鶴見俊輔らとともに編集活動を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みねたか@
37
鶴見氏の社会行動や市民運動への参加とその考え方を中心に編纂された巻。安保,ベトナム反戦,脱走兵支援,在日朝鮮人やハンセン病者の権利擁護,鶴見氏がかかわった領域の幅広さを知る。「知識と感覚と行動」の統合。実行の方向にふみだすことが大切という考え方。生活に根差した行動,自らの自然な感情に基づく行動に結びついてこその理論。根底にある「殺したくない,人の手助けをしたい。」という思いが随所に見える。この思いを実践に結びつけ,自らの拠り所を問い続けた姿勢に驚かされる。2020/01/27
踊る猫
37
ベトナム戦争から9.11同時多発テロまで、知識人は活動し続ける。決して動きを止めることなく発言を続けて来た彼の姿は、今インターネットが普及し誰もが知識人になり得る時代が訪れたからこそ見習うべきところが多いのでは? 意外と書物の思い出ではなく出会った人々の思い出が開陳されているところも興味深い。つまり、殻に閉じこもることを良しとしなかったというわけだ。それ故に限界を孕んでいるとも受け取れるが(流石に時事的な話題は風化している)、ここまで動き時代を見据えたのはグレート。辺見庸の姿勢を思い出した。ジャーナリスト2019/10/25
フム
23
「戦争に反対する何の行動も起こせなかった、しようと思っても指一本あがらなかった。」それが筆者の記憶だ。戦争に対する絶望感よりも、自分に対する絶望の方が深かったと。その記憶が、戦後の数々の行動に結びついたことはまちがいない。指一本動かすためにも「精神のバネ」が必要だ。もう一度あのように体がすくまないように、知識と感覚と行動とをつなぐ回路を自分の中に設計しておく。理論だけでは戦争反対の姿勢を長時間支えることはできない。べ平連、安保闘争、らい予防法廃止運動、様々な活動が生活の中に根をもってこそだ。2019/09/05
秋 眉雄
22
黒川創さんが編集した鶴見俊輔コレクションの2冊目。タイトル通りの一冊。『わたしのなかの根拠』『日付を帯びた行動』『脱走兵たちの横顔』『隣人としてのコリアン』『先を行くひとと歩む』。2019年、最も大きな収穫のひとつは鶴見さんという存在にようやく気がつき、ゆっくりと対峙し始めることが出来そうだと思ったことでした。2019/12/15
よきし
13
非暴力アナキストでもあった鶴見俊輔による彼自身の信条に基づく社会運動へのコミットの記録/記憶。反原発デモから始まり、ハンセン病、在日コリアン、ベトナム反戦運動から脱走兵支援運動、そして公害や宗教といった問題まで、彼の人生の中で関わった人びとの生活の中から立ち現れてくる行動としての社会運動という描き方にそのつど、胸打たれ、自分のふがいなさを思った一冊であった。繰り返し読み返したい一冊だ。2022/01/14