出版社内容情報
ドゥルーズ=ガタリを哲学的に再構成し、スピノザ的実体にかわって器官なき身体を基底にしたかつてない思考へ迫る絶後の哲学。
【著者紹介】
1958年生まれ。著書『存在と差異―ドゥルーズの超越論的経験論』、『死の哲学』、『超人の倫理―〈哲学すること〉入門』、訳書、ドゥルーズ『ニーチェと哲学』他がある。
内容説明
ドゥルーズ=ガタリを哲学的に再構成しスピノザ的実体にかわって器官なき身体を基底にした“分裂的”総合の思考を創出する新たなるエチカ。
目次
第1平面 唯一の器官なき身体(“分裂的‐逆行的”総合;実在的区別の組成;脱地層化の原理―新たな“エチカ”の思考へ)
第2平面 “情動‐強度”論―多数多様な器官なき身体(変様―脱領土性並行論;情動―“強度=0”における強度)
著者等紹介
江川隆男[エガワタカオ]
1958年生まれ。東京都立大学大学院博士課程単位取得退学。現在、立教大学教授。博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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またの名
10
すぐに役立つ実践にも経験にも奉仕しない総合的原理を構成するというとんでもない宣言から開始。ジジェクがヘーゲルの弁証法に、精神分析の助けを借りて出発点が出発点への回帰によって遡及的に見出される運動を見出したとすれば、スピノザの因果的な実体を、ドゥルーズとガタリを通すことであらゆる様相に先立つ脱領土化運動・産出的原理としての欲望を生じる器官なき身体=強度0へと読み替えるのが本書。あまりに抽象的な抽象機械へと向かう記述が当然の如く抽象的で解り易く親しみのもてる優しい解説を拒絶するのは、まさに反時代的で反道徳的。2014/08/14
madofrapunzel
4
★★★☆☆ (実は270ページくらいまでなので、簡単な感想を) ドゥルーズを下敷きとした、研究ではなく哲学、これが哲学だと思う。素晴らしい。2014/08/14
トックン
1
無軌道に無規範に伸びる樹状突起の根茎の鋭利。それは、包摂物である身体をも突き破り、自己運動を完遂することを欲する。ドゥルーズ思想のエチカを探ると「器官なき身体」へと行き着く。器官という構造物はなく、容器としての身体だけが、つまり問い=問題だけが自己拡散的に生成し、容器をも突き破らんとする。ここで意思とは何かが問題となる。著者は自由意思・非意思・無意志全てを肯定するジル像を描く。つまりCsOに主体は画定できない。神出鬼没な問いだけが支配構造を打ち砕き脱領土化する。しかしこれが再ーになることには要注意。2016/06/18
みみみんみみすてぃ
1
★★★★★ とにかく圧倒的に面白いのである。斬新かつ重厚。ドゥルーズのそれよりもかなり厚みを増した文体は、読み進めていて「ゴリゴリッ」というような音が鳴ったような気がした。それから、後半の「天候」の議論はむちゃくちゃ面白かった。こういう哲学がほんとうに好きだ。ドゥルーズに強く影響を受けながら、かつ著者自身の哲学を打ち出すという、不朽の名作であろう。江川氏のさらなる探求を待つ。2016/01/07
にっつぁん
1
人間のうちで第一に考えられるのは、感情を抑制する理性やあらゆる人間活動を一つの目的のもとにおくような最高善ではない。人間の頭部の上には、むしろ生命力を増大も減少もさせるような気象的諸現象、あるいはむしろ<大気‐乱流>が存在し、人間の皮膚の下には、内部の自然――現働的本質の状態、強度的部分――を直接的に表示するような感情あるいは触発が存在するのだ。252-253ページ2014/12/24