内容説明
あの町と、この町、あの時と、いまは、つながっている。生きることをまっすぐに考える絵本「こども哲学」から生まれた物語!
著者等紹介
重松清[シゲマツキヨシ]
1963年、岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒。出版社勤務を経て執筆活動に入る。ライターとして幅広いジャンルで活躍し、1991年に『ビフォア・ラン』で作家デビュー。1999年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木賞、2010年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞
ミロコマチコ[ミロコマチコ]
1981年、大阪府生まれ。京都精華大学人文学部卒。23歳のとき、独学で絵を描きはじめ、2005年に初の個展開催。主に動植物を描き、全国で展覧会を多数開催する。2011年に「HBファイルコンペvol.21」藤枝リュウジ賞受賞、2013年『オオカミがとぶひ』で日本絵本賞大賞を受賞。美術同人誌『四月と十月』の同人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
124
重松さんらしい著作。普通の小説家だったら、あえて小説にしないような根源的なことを、物語の中で考えていく。例えば、「自由って、なに?」では人間にとって自由とは何かという問題を、自分の経験に基づいて描いており、説得力があった。このような物語は下手をすると説教くさくなるが、そのような臭みが出ないように注意深く書かれていると思う。東北大震災をテーマにした連作「あの町で」も収録されており、被災した人たちに寄り添うような筆致に心を打たれた。本質をぱっと掴み取って一筆書きでさっと描いたような挿絵も素晴らしい。2016/04/16
じいじ
115
重松清が子ども達に向けて書いた本なのだろう。しかし、大人が読んでもすごく面白く深い内容だ。冒頭の【よいことわるいことって、なに?】から考えせられる。文章はやさしいのだが、中身は凄く哲学的なのだ。とてもさぁ~っとは読み流せない。小川糸が自著で「日本の子ども達には”道徳”ではなく”哲学”を教えるのがいい」と書いていたが同意である。ミロコマチコの挿絵もこの本を守り立てている。身近に置いて、何度も何度も読み返したい本である。2017/02/24
☆よいこ
97
児童書。YA。[よいこととわるいことって、なに?]ぼくたちは「世の中」という名前の電車に乗り合わせた乗客[きもちってなに?]妹を妬むきもち、友だちを好きだったり嫌いだったりする気持ち[知る、ってなに?]知識だけでない「人を知る」こと[あの町で・春]舞い上がる桜[夏]野球[秋]鮭[冬]瓦礫処理ダンプ、雁風呂[いっしょにいきるって、なに?]仲良し9人グループ[自分って、なに?]オンリーワン、他人がないと自分がわからない、作られた自分[自由ってなに?]死んだ親友[人生って、なに?]幸せ?▽良本2020/08/21
モリー
87
東日本大震災以来、振動に敏感になった。つい先日も震度2の地震に身構えた。あの日からもうすぐ11年になる。この本は数年前から手元にあったが、何故か読み通す気になれずに今に至った。これまでは、自分が生きていくだけで精一杯で、他人事には構ってられなかったからだろうか。私の町にも、津波で親を亡くした子が住んでいた。沿岸部の町から親戚の住むこの町へ来たその子と出会ったとき、その子はまだ中学生だった。今は立派な社会人になっているに違いない。快活で明るく振る舞う姿が今でも目に浮かぶ。生きる事を考えさせられる読書だった。2022/02/20
まったん
75
何度も泣いた。向き合うには苦しく辛く心身共に体力を消耗してしまう問題がシンプルに分かりやすく書かれている。社会の縮図を電車内の人間模様で表しているのが上手く、それぞれの正しさ弱さが心に刺さり、何というか複雑な気持ちになった。数え切れないそれぞれの正しさは、悲しいが混ざり合うのは難しい。悲しく窮屈な「自由」も、楽しくて気持ちのいい「不自由」もある。自分なりに折り合いをつけて良い方向に着地できれば生きやすくなるのだろうが、それまでには数多くの経験、悩み、学びが必要で、生涯かけて解かなければいけない難題だ。2013/12/18