出版社内容情報
明治二十年代に大流行した歌「オッペケペー節」を通じて、政治、社会、文化と、様ざまな面で近代が訪れていた日本をふり返る。
内容説明
明治二四年六月、東京・浅草で歌われた「オッペケペー節」は、一躍、大人気に。歌ったのは後ろ鉢巻、陣羽織に軍扇というコスプレ姿の川上音二郎。日本のラップの元祖ともいうべきこの歌が民衆の心をとらえた過程を追いながら、政治、インフラ、文化と、多方面で近代化が始まった日本を旅する。
目次
序章 よみがえる「オッペケペー節」
第1章 「オッペケペー節」関西で生まれる
第2章 「オッペケペー節」東京公演で人気沸騰する
第3章 「オッペケペー節」東京市中で大流行する
第4章 「オッペケペー節」全国で歌われる
第5章 「オッペケペー節」と声の文化
終章 その後の展開
著者等紹介
永嶺重敏[ナガミネシゲトシ]
1955年、鹿児島県生まれ。九州大学文学部卒業。出版文化・大衆文化研究者。日本マス・コミュニケーション学会、日本出版学会、メディア史研究会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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へくとぱすかる
55
元祖・ラップミュージック。歴史ドラマに川上音二郎が登場すれば、必ず演じられたであろう。しかしその旋律は長い間謎であったという。日本人の歌声の最古の録音として発見されたのは、文化史的にも大きなニュース。フランスのパリと明治の東京との結びつき、そして放送のない時代に、どのようにして流行歌が広まったのかという謎解きとして、楽しく読んだ。そして川上音二郎という、マルチ芸術家を深く知ることのできる本である。2019/06/07
春風
24
明治20年代の流行歌『オッペケペー節』。テレビ・ラジオは言を俟たずレコードすら無いこの時代に、どのように伝播され、日本各地で共時的にこの流行を共有できたのか。そしてどのように多くの民衆に受容されるに至ったかに関しても、当時の政治運動やメディア媒体等に触れ考察を加えている。庶民的視座の歴史書としても、メディア論としても示唆に富む内容である。読書をしていて、これほどまでに頭に音曲が鳴り響く経験というのは初めてであったが、それを通じ、近代への過渡期の騒々しさを肌で感じられるようで、興味深い論考であった。2019/03/07
さとうしん
12
自由民権運動へのノスタルジーが込められているという時代背景と政治的なメッセージ性の強さ、「声の文化」と「文字の文化」をつなぐ存在として、蓄音機や鉄道といった新しい事物との関わり、そして反政府的な内容から日清戦争賛美へといった内容や世相の変化など、多角的にオッペケペー節について分析している。オビにもある通り「明治150年」を意識しているようだが、こういう明治の掘り起こしもアリだろう。2018/02/02
nadaha
6
明治時代に流行したオッペケペー節を成立から流行り、廃れていくまで論じる。もともとの歌詞は政治や有名人を皮肉る意味合いもあったようだが、流行していくにつれて俗っぽくわかりやすいものになっていく。ポップな要素がなければ人口に膾炙する前に消えてしまうし、流行ってしまうとポップな要素ばかりが求められて元々伝えたかった事や重要なキモの部分が消えてしまう。人気が出るというのはつまんなくなることでもある。反社会的なものが一部に受けて、それが大衆化する過程でトゲが抜かれていくのはどこにでもある事なんだなぁ、と。2018/10/02
AKa
2
壮士演劇から新聞や鉄道、蓄音機などといった新たなメディアを通じて「流行歌」オッペケペー節が生まれた。元々民権運動の余韻が残る歌詞であったが、日清戦争の頃には戦意高揚を意図した替え歌が数多く作られた、という流れは、「国民国家論」的でありますね(ちなみに、参考文献に牧原憲夫『客分と国民のあいだ』があります)。2018/08/29