出版社内容情報
消費税、TPP、量的緩和、為替……。これらの諸問題は日米間の通商政策の歴史から見ると一つの道筋で繋がっていることが分かる。
経団連をはじめとする輸出産業は、なぜ消費税の増税を喜ぶのでしょうか。例えば日本製品を米国に輸出する場合、輸出企業は、消費税に当たる金額を輸出還付金として日本政府から受け取ることができます。これが非関税障壁となり、日本企業の競争力を増すことになるのです。米国は、過去にも日本の消費税に対して以下のような報復を行なってきました。1989年 消費税導入→日米構造協議、1994年 消費税増税法案可決→年次改革要望書、1997年 消費税増税→金融ビッグバン、2010年 消費税10%案→日米経済調和対話、2012年 増税法案可決→TPP協議本格化……。では、今年と来年の増税には、どのような報復を画策しているのでしょうか。
「消費税」をはじめとして「TPP」「規制緩和」「為替」等の諸問題は、日米交渉の歴史という観点から見ると一つの道筋で繋がっていることが分かります。現地で渉猟した米公文書館の資料をもとに解説する「誰も書かなかった日米経済戦争の真相」、著者の集大成となる一冊です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
20
円安になったとしても、海外移転が進めばメリットは 受けにくいという(22頁)。 TPPと物価上昇は自己矛盾に陥るという(27頁)。 わたしの考えは、TPPで安い財やサービスが大量に入るが、 国産の安全なのは高いので、やはり、国内での格差は拡大すると思える。 非正規待遇が改善せず、格差が拡大しては、 景気回復はあり得ない。 TPPで関税引き下げ、消費税で物価を上げるという矛盾(30頁~)も、 私の自分史の一節で矛盾を突いた覚えがある(2012年2月の2作目にて) 。2014/04/07
RED FOX
11
わたくし消費税と小売売上税との違い、も知らず初勉強・・・。輸出還付金、為替などのテーマに対し、元ディーラーの著者の疑問と憤りがアメリカ公文書を掘り起こして・・・。何より著者の隠れたヒューマニズムに感動しました。2014/03/08
加藤久和
7
アメリカの公文書に丹念に当たることにより付加価値税(消費税)の本質を暴き出した労作である。政府は「社会保障と税の一体改革」などと喧伝し消費税率を引き上げたのだが、これは大嘘で実は消費税とは輸出大企業に対する還付金という名の利益供与を伴う見えない関税であったのだ。つまり消費税は輸出大企業のみを利する「非関税障壁」なのである。アメリカは付加価値税を採用していない。アメリカは他国が還付金を伴う付加価値税の引上げと法人税の引下げをセットで実行した場合には報復措置を取ると明確に宣言している。さて日本政府はどうする?2015/01/02
バーベナ
5
他の岩本さんの著書で、初めて『輸出還付金』という言葉を知った。今回もこの言葉はキーワードになっている。タイトルの意味が分かってくると、日本経済の仕組みとしての、一部の人だけが得をすることへの警告がはっきりと実感できる。『ひとりひとりがまず幸せでないと、弱者へ配慮はできない』ここからスタートする経済理論。いろいろな立場の人が読んでくれるといいなと思う。2015/10/16
Francis
5
前著「バブルの死角」でも論じられていた、日本の消費税のように各国が付加価値税を導入しているのは輸出補助金の代替としての輸出還付金が組み込まれているのが理由であり、アメリカはそのような付加価値税を非関税障壁として考えて日米構造協議やTPPを対抗策としてとってきたのではないか、との仮説をアメリカ公文書館の資料も駆使して検証している。他にも戦後の1ドル=360円のレートは輸出振興のために円安気味に設定され、そのことが今なお円高に対する否定的な見方に繋がっているのではないかとの指摘も鋭い。今回も読んで損はない。2014/02/11