出版社内容情報
養父による性的虐待を描いた自伝的小説「ファザーファッカー」。四半世紀を経て、今度は母の視点で凄絶な過去を見つめ直す力作長編。鬼母降臨ーー。
あの衝撃のベストセラー「ファザーファッカー」。
義父に犯される少女の視点から描かれた、筆者の自伝的作品から25年、
同じテーマを、今度は娘を自分の男の魔手にゆだねる母親の視点から描く。
昭和10年、九州のとある町で生まれた主人公・逸子は、ダンスホールで知り合った男と、得意なダンスで生きるべく、長崎に出る。
ところが、過酷な現実生活に追われ、2人の娘を得るも、
早々に男との結婚生活は破綻。ホステスとして働いていた
キャバレーで知り合った新しい男との同棲生活に入るが、
あらたな生活にふたたび過酷な試練が襲う。
長女・静子の成長とともに、男の視線と関心は逸子から離れていく。
異常な熱意を静子に寄せる男への愛情なのか嫉妬なのか、
逸子は娘を男の毒牙にゆだねてしまう。
ーー母はなぜあんなことをしたのか。
そのときの母の年をはるかに越え、自身が母となったからこそ、
みえてくるものとは。
内田春菊が描く、自身の生をとらえなおす凄絶かつ渾身の一作!
内田 春菊[ウチダ シュンギク]
著・文・その他
内容説明
あの衝撃の自伝小説「ファザーファッカー」から25年―毒母降臨!あの時、母は何を考えていたのか。少女を追い詰めた養父の虐待を、いま、母の視点から描いた衝撃の問題作。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ででんでん
97
「ファザーファッカー」は、25年も前だったのか。それを母の視点で改めて書いた作品。「ファザー…」が衝撃的だったということ以外、記憶が曖昧になっていたが、読み進むうちに甦る。春菊さん視点の前作より、今回の作品の方が、より一層酷さが浮き彫りになっていると感じた。刺し殺したい気持ち…わかる。自分が死んでしまわずに、生き延びた春菊さんを尊敬する。2019/02/05
風眠
96
『ファザーファッカー』を母親の目線で描いた本作『ダンシング・マザー』。これを書いている時、作者は相当に苦しかったと思う。私の想像では計り知れない、地獄のごとき苦しみを追体験したはず。虐待に加担した母親の気持ちを想像し、客観的に書く作業は、娘としては認めたくない事と向き合う事でもある。自分の心の苦しみには一切触れず、母親が感じたであろう事のみ語られている為、作者のモデルである静子が得体のしれない感じに私には映った。そう感じさせる作家の凄味。完全母親目線で書ききった作者の決意に対し、私は静かに拍手を送りたい。2019/02/06
nana
76
読んでいてすごく不快だった。毒母はもちろんだけど、毒父さもひどい。 2019/01/09
しーちゃん
74
読み進めるのに、かなりの覚悟が必要。心が弱っている時に読むべきではない。私自身この怒りを何処へ持っていけば良いのか、嫌悪と狂気、作者である主人公はよくぞ今まで生きながらえていたなと感心し、感謝する。これはもう人間ではなく鬼畜だ。自分の娘を情夫に差し出す。襖一つ隔てた部屋で。「ファザーファッカー」から25年、その時のおぞましい感情が、本作で蘇る。続けて言うがこの作品から学ぶべき事は何もない。興味のある方はまず「ファザーファッカー」から読む事を進めます。2019/06/17
そら
71
内田さんの作風は知っていたが、生い立ちのことは知らずに単なる小説だと思い読了した。この物語には父親が2人登場するが、どちらもヘドが出るほど糞みたいな奴だ。母親の目線で語られるこの物語は何の救いも光もなく、ただただ気持ち悪いのと、黙認(むしろ娘を差し出す)的な母親に天罰でも下るんじゃないかと期待したが、最悪なままぷっつりと途切れてしまう。唖然とした。これは何なんだ?とあとがきを読み、状況を理解した。ありえないし、本当に気の毒だと思う。絶対に許せない。だが家庭内での性的虐待はなくならないことも現実なのだろう。2022/03/20